山本喜平太校長皆さんこんにちは。校長の山本です。

さて、ちょうど学年も折り返し地点を過ぎた11月15日、本校で第2学期保護者懇談会が行われました。午前中の授業参観と、午後の学年別懇談会の間にお時間をいただいて、私から皆さんにご挨拶をする機会がありました。そこでのお話をここに再掲させていただきます。改めて私からのメッセージをご確認いただければ幸いです。

(以下、講話内容)
今、皆さんのお子さんは、ちょうど思春期です。これまではお父さんやお母さんの枠の中で生きていた子どもたちが、まさに自立の試みをしています。お父さんお母さんの言うことが、それまで絶対的なものでしたが、これからは自分なりのルールを作って生きていきたいという、親離れの時期にさしかかっているのです。
懇談会2

そういう時に一番大切なのは友だちです。ところが今、そんな「友だち」の概念が、子どもたちの間で変わってきています。驚くべきことに今の子どもたちは、友だちに対してもなかなか本音を言えない状況があるのです。友だちを傷つけないために、きついことをズバっと言わないというのです。傷つけたくない、嫌われたくないという、ある意味では「優しい」子どもたちが増えているのです。現代の子ども同士の付き合いというのは、時には大人の世界以上に、疲れるもののようです。

こんな状況をそのままにしておくと、やがては就職や結婚といった、社会人としての人生を歩んでいく上でも、問題が起こりかねません。昨今言われているような、結婚しない人や、仕事に行けない人が増えているのも、そんな理由で人付き合いが不得手な、優しすぎる若者の心に原因があると思うのです。そして対人関係でショックを受けたら、もうそこから逃げるだけの人生となり、ひとり孤独と向き合い続けてしまうのです。これは大変不幸なことです。人間はお互いにつながりあって、支えあって生きることで、本当の喜びを感じるはず。マザー・テレサも言っていますが、もっとも恐ろしい貧困は、孤独と、必要とされていないと感じることなのです。

そういった状況に対して、学校はどうあるべきか。私たちはいつも考えています。

幸い佼成学園女子は、知識や体力もさることながら、心を鍛えることが一番大事だということを、教育の柱にしています。ですから私たちは、積極的に人とのつながりを密にするための方策を講じています。それは「学校行事」です。私は常に、「人と人のつながりが薄い中に、生きる喜びはない」ということをテーマにして、「学校行事を大切に」と、しつこく言い続けています。スポーツフェスタ、乙女祭、合唱コンクール・・・そんな学校行事の準備や運営の中で、小さなすれ違いや傷つけあいを経験し、それを謝ったりしながら、学習していくしか方法はないと確信しているのです。人との付き合い方は、人との間の学習でしか得られません。そして、人と人がお互い混ざり合うのが学校という場なのです。こういう時期に学校行事を通じて、どうしたら子どもたちがお互い協力したり、誤解の悲しみを乗り越えたりしながら、作り上げた後の感動を得られるか、ということを考えているのです。そういう集団で共有する感動体験こそが、人を好きになり、生きる実感をわかせることだと信じ、教師が一丸となって全力で取り組んでいるのです。

だからお父さんお母さんには、そんな娘さんたちのサポートを家庭でしていただきたいのです。何も難しいことではありません。ただ話をよく聞いてあげるだけです。コツはあります。まずは、娘さんにたくさん話をさせるようにすることです。そして話し言葉の中身に一生懸命耳を傾けて、最後に30秒くらいのまとめの言葉で締めくくってあげてください。「あなたが言ったことは、こういうことなのね」と。そんなふうにただ聞いてうなずけば、子どもからどんどん言葉が出てきてきます。子どもたちも自分の感情を言葉にすることで、気持ちの整理ができるのです。現代の子どもたちがよく使う「むかつく」や「うざい」という言葉に込められた、「ウソを言われて腹が立つ」、「気持ちが伝わらなくて悲しい」、「誤解されてくやしい」という真意を読み取り、「どうしてうざいの?」と聞いてあげてほしいのです。子どもたちの頭の中には、私たち大人が想像もつかないような物語があります。だから「うざい」「むかつく」の中身を聞いてあげて、「その時どう思った?」「そう、じゃああなたはどうすればよかったと思う?」「つらいわね、友だちにウソを言われたら」と、返して欲しいのです。そう返されることで、子どもたちは「むかつく」という、物語のない動物的な反応から、「こんなこと言われてこんなふうにくやしかった、だからこんなつらい思いをしてるの」というような人間的な反応へと、心が整理されてきます。そうするとだんだん心が穏やかになってきて、「私、あの子に謝るわ」とか「もう一回確認してみるね」と、自分で解決策を見つけてゆくのです。

お父さんお母さんはきっとお忙しいでしょうし、時にはやっかいなことだと感じるかもしれません。しかしまだお子さんは10代です。これが20代を過ぎたら、トラブルが起きても、もう手遅れになってしまうのです。まだまだ回復できる今のうちに、精一杯、お子さんと向き合っていただきたいのです。今後ともかわいい娘さんの幸せのために、お父さんお母さんと教師が力をあわせてがんばりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

校長 山本喜平太