100120_rijityo1月8日の始業式の後、恒例となりました酒井理事長先生からの貴重なお話を聴く機会がありました。
今回は高校3年生を対象とした「命の尊さ」についてのお話。間もなく卒業を迎える高校3年生にとっては、最後の「講話」となりました。

【3学期:高校3年生対象:酒井理事長先生講話】
間もなく受験と卒業を迎えようとしている高校3年生の皆さんへ、私から少しだけお話をさせていただきます。人間として、女性として、人生を生きていくための「人生の受験勉強」だと思って聞いてください。

私は、愛知県豊田市出身です。お正月には地元に帰り、親戚一同と会ってきました。
その時に、私の姪にかわいい女の子の赤ちゃんが生まれたことを聞きました。予定より早い出産に驚くと、実は重い妊娠中毒症のため、帝王切開で出産したそうです。幸い、母子ともに無事でしたが、私の姪は命を賭けて子どもを産んだのです。
きっと皆さんも、やがて素敵な彼ができて、かわいい赤ちゃんを身ごもる機会もあるでしょう。これは自然の摂理であり、素晴らしい営みです。そのことについて、私の考えをお話いたします。

先日、小倉の小学生の男の子が書いた詩を読みました。その子のお母さんは、心臓に重い病気を持ったまま、その子を妊娠したそうです。
「なんとしても生みたい」。
母体が危険なため、お医者さんは反対しました。しかしそのお母さんは、自分の生死を賭けながらかけながら生んだのです。その子どもが大きくなって、当時のお母さんの決意を知り、書いた詩なんです。
文章には、
「命ってすごいね」
「僕の命は宇宙の始まりからつながっている」
「奇跡なんだ」
「すごく大切な命なんだ」
とつづられています。

このように、皆さんの命もずっとつながっているんです。
また先日、筑波大学名誉教授の村上先生が命について、新聞に寄稿された文章を読みました。
村上先生によりますと、38億年前、地球に初めて生物が誕生したということが書かれていました。
その命は38億年間、一度も途切れることなく、気の遠くなるような時間をかけて、進化を続けてつながってきているのです。その結果、万物の霊長として私たちがいるのです。
「『子供を作る』と言うが、それは人間の思い上がりだ」と村上先生は書いています。
世界のすべての知恵を結集しても、小さな大腸菌の細胞ひとつすら、ゼロから作ることはできない。しかし私たちの細胞は60兆。一つの受精卵細胞から約38週間で60兆の細胞からなる赤ちゃんへと成長するのです。その間に胎内では、この地球上に生物が誕生してから38億年分の歴史を刻んでいます。生物の授業で習ったかも知れませんが、「個体発生は系統発生を繰り返す」ということです。
生物学者によりますと、細胞受精卵は0.6ミリグラムなのだそうです。それが約280日間で、約3200グラムの赤ちゃんになります。実に540万倍です。1日だと、約1万8800倍に成長しているんです。そして身長は約280日間で2312倍になるんです。おなかの中ではものすごい勢いで、命が成長しています。また、先ほど「胎内では38億年分の歴史を刻む」と申し上げましたが、これを換算すると、胎内での1日は生命の進化1千万年以上に相当するのです。これが人間の命の尊さです。
卵子は受精後、1週間で子宮に着床します。毎日細胞分裂しながら、やがてかわいい赤ちゃんになるのです。

私は佼成看護学校で、学生の皆さんにお話しする機会があります。そこである学生さんが勇気を振り絞って、その友人の体験談を私に伝えてくれました。その友人は、「望まない妊娠をして、赤ちゃんを堕胎した」というのです。学生さんによりますと、「スプーンのような器具で胎児を取り出す」「胎児は逃げ回っていた」「その話で涙が止まらなかった」のだそうです。その時に「エコー」という診断機具で撮影した写真には、2つの小さな命がはっきりと写っていました。双子でした。

ところで私は、自分の「初孫」誕生の日をすごくよくおぼえています。最初に病院に会いに行ったときのことを、昨日のように思い出せます。新生児室のカーテンを開けてもらい、10数人いる赤ちゃん中で、どの子が私の孫か、すぐわかりました。なぜなら、一番かわいかったからです(笑)。

皆さんは、まだお若く、いろんな夢をお持ちのことだと思います。しかし、女性として命を受けた以上、次の世代に命を受け継ぐ役割も担っているのです。大学進学には直接役に立つことはないかも知れませんが、長い人生で今日の私の話はきっと意味があることだと思います。命の尊さ、大切さ。このことをしっかりと心にとどめておいてください。

これが、私から皆さんへ最後の授業です。佼成女子を巣立っていっても、悔いのない人生を歩んでください。そして自らの命を大切にして、素敵な人と巡り合って、幸せな一生を送ってください。

(まとめ:佼成学園女子中学高等学校広報室)