高3理事長講話12月24日の2学期終業式後、高校3年生対象に酒井理事長先生からの講話がありました。
年に1回のこの講話は、来年卒業を迎える高3にとって今回が最後の授業です。やがて母となる生徒たちへ、酒井理事長からの贈られた「命の尊さ」のお話でした。



皆さんは、これから大学を経て社会人となり、やがて結婚して、お母さんとなります。
私たちの命は、お父さんお母さん、そのまた親、祖先から受け継いだものであり、
これから生まれる子供たち、孫たちに引き継がれていきます。
今日は、そのかけがえのない命について考えてみたいと思います。

私には孫が5人おりますが、今年の1月に生まれたもうすぐ1歳になる男の子は、
お母さんが切迫流産の体質だったために入退院を繰り返し、ようやく無事に生まれました。
この孫を見るたびに、いつも胸に来るものがあります。
「元気で育てよ」と思っています。

「己が身の誕生の日は母苦難の日」という言葉があります。
わが子の誕生と引き換えに亡くなってしまうお母さんもいるのです。

九州の小倉に行ったとき、ある小学4年生の男の子がこんな詩を書いていました。
「お母さん、僕知らなかったよ。弟を生むときにお母さんが死んでしまうかもしれなかったこと。
でも、奇跡は起こったんだ。生きたいというお母さんの気持ちが神様に伝わったんだ。
命ってすごいね。
僕の命は宇宙の始まりからつながっているんだって。
ご先祖様が一人でもつながっていなかったら、ぼくは生まれてこなかった。僕の命は奇跡なんだ。
すごく大切な命なんだ。だから、僕は精一杯生きるよ。そして命の繋がりをずっとつなげていくよ」

この男の子の母親は心臓に大きな障害を持っていて、
お医者さんに2人目の子供を産むのは無理だと言われていました。
しかし、お母さんは危険を押し切って男の子を生みました。
上の男の子はそのことを知ってこの詩を書いたのでしょう。
お母さんは大変な思いをして弟を生んでくれたと思ったのでしょう。
この詩は学校で大評判となったそうです。

筑波大名誉教授の生命科学者、村上和雄先生が
かつて新聞に寄稿された「命の不思議」という一文があります。
それにはこんなことが書いてあります。

「この地球上に命が初めて誕生したのは38億年前。
その命は少しずつ進化し、38億年もかかって今の人間に進化してきた。
その途中で、どこかで命が切れてしまったら、今の人類はいない」

私たち人間の細胞は60兆と言われています。
小さな1つの細胞が天文学的な分裂をすることによって、私たちはここにいるのです。
生物学者の話によると、最初の受精卵は0.6ミリグラムだそうです。
それが母親の体内にいる280日間の間に平均3250グラムに成長します。
赤ちゃんの体重は母親の胎内で約500万倍に成長し、身長も2312倍に成長します。
ちなみにその赤ちゃんが生まれてから成人になったとき体重60キロと仮定しても、わずか20倍です。
おなかの中では500万倍。いかに命の成長がすごいことかお判りでしょう。
赤ちゃんは、おなかの中で原生動物から人類に進化する38億年のプロセスを再現しているのです。
胎内の赤ちゃんの1日には、生物史の何千年かに相当しています。
いつか命を宿すであろう皆さんには、ぜひそのことを覚えていてもらいたいと思います。
私が胸を痛めているのは、少子化と言われる現在、
1年間に生まれる赤ちゃんが現在100万人ちょっと。
しかし途中で絶たれている命は、届けられているだけで30数万人あります。
届けられないケースも合わせると、100万人を超えるでしょう。とても残念なことです。

ある、中学3年の女の子が、新聞にこんなことを書きました。
「親戚のお姉さんに赤ちゃんが生まれた。
そこでふと、私の母を生んだ10代前の母はいつの時代の人だろうと思った。
数を数えると、10代前の先祖は1024人になった。
祖母に聞くと、祖母の母は大正生まれで、その母は江戸時代生まれということまではわかった。
10代前の母は、すごく昔の人だということだ。
今私が生きていることは、ずっと昔の命が受け継がれているからだと思う。
そのことに気づけたとき、私の祖先の人たちにありがとうと言いたくなった」

高3理事長講話私は昨年の高3にもこうした命のことをお話しし、感想文をいただきました。
その中に、1か月前に母親を亡くしたばかりという生徒がいました。

「兄弟がいなかったので、母とは友達のように人生の先輩として語り合うこともありました。
今はとても辛いのですが、
それと共に父と二人になってみて初めて母の存在の大切さを身に感じました。
母が亡くなった今、私は命を大切にしない人を見ると怒りを覚えます。
もっと真剣に命について考えてほしいと思います」

私は彼女に手紙を書きました。
そして彼女は立派に大学に合格し、卒業式の日に私にそっとお返事の手紙をくれたのです。

「月日は早いもので、母が他界して3か月が立とうとしています。
先生の手紙の中に、思いやりのある日本一のあるお母さんだね、と記されていました。
いまだにそれを思い出すと涙が止まりません。母は本当に家族思いでした。
そんな母にいつか感謝の気持ちを伝えたいと思っていましたが、
亡くなる日までそれを伝えることができませんでした。
逆に亡くなる前日、母に『受験勉強あるのにごめんね、ありがとう』と言われてしまいました。
お互いに感じるものがあり、涙が止まりませんでした。今でも後悔をしています。
18年間分のありがとうを言いたかった。
今となっては母に届くことのなかった感謝の気持ちを、私は忘れることなく生きていきます。
佼成女子での3年間は、楽しい楽しい3年間でした。
未来につながるたくさんのことを学ぶことができました。
最後に命に学ぶ講演を聞くことができて、私は嬉しかったです」

私は、来年には卒業される皆さんに、幸せな人生を生きていってもらいたい。
そして、どうか命を粗末にしない、温かいお母さんになっていただきたいと願っています。

(佼成学園女子中学高等学校 広報室)