ボランティアと追悼のツアー「被災地のために何かできることはないか」。そんな生徒たちの想いが、佼成女子の吹奏楽部有志メンバー35名による生活支援型ボランティアの「ボランティアと追悼のツアー」として実現しました。8月18日から20日の3日間、生徒たちは被災地を自分たちの目で見て、被災地の方々のお話を聞き、様々なことを感じ、考えて、学校に帰ってきました。

8月18日(土)、佼成女子の吹奏楽部有志35名と引率の教職員は朝の8時過ぎにバスで出発しました。幸い渋滞もなく、お世話になる立正佼成会の花巻教会に到着したのは午後3時くらい。7時間以上の長旅です。
今回のツアーは、佼成学園の設立母体である立正佼成会「こころホットプロジェクト」の要請によって実現したものです。事前に7月15日(日)に先方より、生徒たちにボランティアの心構えを教えていただきました。
夜にはスタッフの方に、津波に襲われた時の状況の映像、また釜石市市民会館の仮設住宅の自治会長さんが、愛犬と別れざるを得なかったことが取材されたテレビのニュース映像などを見せていただき、明日のためのお話を伺いました。生徒たちはスタッフの方が用意して下さった折り紙からそれぞれ自分のイメージに合う色を選び、それに今の自分の素直な気持ちを書きました。スタッフの方は、今書いたその気持ちを大切に、明日に向かってくださいとおっしゃいました。その後ミーティングをし、初日は就寝となりました。

吹奏楽部有志8月19日(日)は、とても暑い1日でした。花巻市から釜石市までは2時間ほど。車内で朝食を取りながらの移動となりました。
8時半には釜石に着き、釜石教会に立ち寄り、演奏を聴いていただきました。釜石市には、昨年の1学期の終業式の時、佼成女子の生徒全員で、被災地で亡くなられた方の冥福を祈ると同時に、復興を祈願して千羽鶴を折り、お届けしています。今回は直接気持ちをお伝えしようと、ご供養として亡くなられた方の御霊に演奏をささげました。
演奏している間に、生徒2名と井上教頭による先発隊が仮設住宅117軒を回り、今日の炊き出しと演奏会のご案内をしました。
仮設住宅では、声をおかけしても出てこられない方、「高校生の吹奏楽が聞けると聞いて、楽しみにしていました」「絶対行くわね」と言ってくださる方、迷惑そうになさる方、反応は様々でした。ご高齢の方もおられ、そういう方は気軽に外出するのは難しいようでした。
生徒たちは焼きそば係、かき氷係、たこ焼き係、子供たちと遊ぶ係と役割分担して、10時45分から13時まで炊き出しをしました。子供たちも20人ほど集まってくれました。
14時から約1時間の演奏会には、80名もの方々が集まって下さいました。曲目は、「踊るポンポコリン」、「サザエさん」、などのアニメメドレー、「津軽海峡冬景色」などの演歌メドレーです。吹奏楽コンクール(8/14(火))の合間をぬって、今回のキャラバンのために練習してきたものです。

この日、来てくださったお客様からスイカや梨やお茶の差し入れがあったり、また、炎天下に屋根からはみ出てしまった生徒に暑いだろうと傘を持って来てくださった方もおられました。演奏後は「ありがとう」「また来てくださいね」という言葉をいただき、生徒たちは感激したり、逆に励まされたようです。
生徒たちは、「1音1音を大切に」という指導を受けています。その1音で、目の前の皆さんが喜んでくださる経験をし、心を込めて演奏することで、相手に気持ちを伝えることができる。そういう音楽の大切さ、音楽の力を理解したことと思います。
現地の方々のお話も伺いました。思い出すのも辛い経験なのに、なんの力もない私たちにまで被災経験を話して下さり、これからがんばっていきますとおっしゃいました。その日の夜、生徒たちはまるくなって今日のこの強烈な体験を話し合いました。
「一人一人に何ができるわけではないけれども、今日喜んでいただいたのがとても嬉しかった、ありがたかった」と涙ながらに語り合ったことが印象的でした。
さらには「ボランティアができて、皆さんに喜んでいただけたから良かった」で終わるのでなく、「みんなが学校に戻ってから、どうこの気持ちや体験をつなげていくのか」、ということが大切なのだ、という確認も行いました。

8月20日(月)、最終日は陸前高田市を訪問しました。
町の9割が津波にのみこまれた陸前高田市は、岩手県の中でも最も多くの方が亡くなられています。
まずはバスで陸前高田市を一周し、生徒たちと同世代が被災した県立高田高校では、バスを降りて一礼しました。高田高校では生徒14名が亡くなり、現在は別の高校の校舎を借りて授業をしていますが、生徒全員が同じ学校に戻れたわけではありません。
そして陸前高田市役所、市民会館、がれきの山の間にあるどの建物も中身のないがらんどうで、想像以上の光景にショックを受けた生徒も少なくなかったと思います。
市民会館には献花台があり、そこで一人一人が献花・黙とうをささげました。

献花・黙とう献花・黙とう


追悼演奏その地区での津波の様子も地元の方にお聞きし、あらためて亡くなった方の無念を思い、冥福を祈りながら、心を込めて1曲の追悼演奏させていただきました。とても心に響く演奏だったと思います。
こうして、吹楽部有志の「ボランティアと追悼のツアー」は終わりました。

「被災地のために何かできることはないか」それを思い続けて、こうして1つの形になって実現したことは、たいへんに有意義なことでした。生徒たちは、自分の目で見て、耳で聴いて、感じ、それが演奏につながりました。自分たちの音楽が一瞬でも被災地の人々の心の癒しになればという心は、十分に伝わったと思います。
被災された方が喜んでくだされば、ボランティアは成功です。今回参加の生徒たちは、人生の宝物になるような体験をしたと思います。この宝物の体験を、友達にも伝えてほしい、今後の人生に活かしてほしいと思います。
多くの生徒にこのような体験をしてもらいたいという気持ちもあります。しかし、今回のツアーも多くの協力があってこそ実現しました。心があれば行動できるかというと、そう簡単な話ではありません。
そして、私たち同行した教職員にとっても、生徒たちだけでなく自分たちがどのようにこの体験を伝えていくのか、という課題ができました。

なお、今回のツアーには、東京佼成ウインドオーケストラから3名の先生方が参加、ご指導して下さいました。本当にありがとうございました。

(文責:教頭 井上まゆみ・事務長 廣瀬尚典)