卒業生座談会ひとくちに教師と言われる職業であっても、環境によって大きな違いがあります。学校の方針、保護者の方々の期待、生徒の学力や目標。その中で、彼女たちは周りの期待に応えつつ、自分の理想の授業を模索する毎日を送っているようです。

― 遊佐さんは普通学級の他、特別支援学級と相談学級も担当されていますが、そちらではどんなことを?

遊佐 特別支援学級には、漢字の読み書きができない識字障害の子だったり、情緒障害だったり、ダウン症、自閉症と診断された生徒たちがいます。学年も学力もばらばらなので、担任の先生と相談しながら、社会の基礎知識を教えています。通常学級とは空気からして違いますが、でも生徒目線に寄り添わなくてはならないという点は共通していることなんじゃないかと思っています。
相談学級の方は、私が担当している市内の公立8校の中学校に通えない子たち20名を1室に集めて教えています。制服も学年もバラバラ。社会は週に2時間で、どちらも私が見ています。その生徒たちの目標は学校に登校してくることであって、学力を伸ばすことではない。この子たちが外の世界も楽しいんだと思ってもらえればよいと考えて、授業をしています。でも、授業を楽しいと思ってくれる生徒もいれば、その一方で元のコースに戻りたいからもっと勉強したいという生徒もいて、そのあたりはいつも悩みどころでもあります。

― 学校では生徒だけでなく、その保護者の方々との交流もあると思いますが、例えば授業参観なども?

橋本 ありますね。私のところは私立の女子校ですから遠くから通学している生徒もいるということもあって、特に中1の保護者の方々は授業参観には熱心に出席されます。主要5教科は時間割がかぶらないように作られているので、中には朝から1日学校にいらっしゃるご両親も。熱心な方は、同じ科目で違う先生の授業もご覧になって比較されたりします。
その授業参観では、保護者の方々にアンケートをお願いするのですが、これになかなか厳しいことが書かれるんです。1年目が不出来なのはまあ当然として、2年目で少し自信を持ち始めて、授業自体はうまくできたと自分では思っていたのに、保護者の方には期待に添えない部分があったようで、眺めていたら涙目になってきて(笑)。でも、3割くらいは良い点も書いていただだいて、講師室で先輩の先生方に大丈夫よと言っていただいて落ち着きました(笑)。
「なんで数学なんてやらなきゃいけないの?」という生徒たちに、点数を取ってほしいと言うよりも数学の面白みを伝えたくて、昨年と少しずつやり方も変えていますし、保護者の方から求められることを考慮しつつやっていこうと思っています。また秋に授業参観がありますので、私が何を考えてこういう教え方をしているかということを、保護者の方にもわかっていただきたいと思っています。2年目になっても悩むことはいっぱいありますね。

山根 私も今度、初めて授業参観があります。アンケートと言えばうちの学校にもたくさんあって、生徒アンケートもあり、なかなかきついことを書かれるんですよ。

遊佐 子供のことを一番考えているのは親ですから、親の期待に添うことも仕事の一環なのかなと思います。

― 生徒に対しては、どんな気持ちで授業をされていますか?

遊佐 私は生徒に対して全力でやっているつもりだけど、でも自分自身の経験を振り返ると、生徒にとって先生って通り過ぎていくものですよね。真剣にぶつかってもほんのちょっと生徒の中に残せればよくて、ほとんどの子は私のことは忘れていくんだと。だから、自分がやりたいやりたくないだけじゃなくて、子供の後ろにあるものも見ていかなくちゃいけないんだろうなと思っています。

橋本 少しでも生徒の頭の中に割り込むには、余談などで生徒とやりとりしてから授業に入っていくのも大事だなと。例えば私の佼成女子時代も、サッカーのシーズンになると担任の有路先生がサッカーの結果を話しているのしか思い出せないぐらいだから(笑)。授業の50分の中でいかに自分の印象を残して、あの先生、あんなこと授業で言ってたな、その時にあの問題をやってたっけ、みたいなことができたらいいなと思うんですけど。

山根 でも数学で余談ってしにくいよね。私は社会でいくらでも脱線できるので、逆に生徒に余談をしゃべり過ぎだと言われています。最近、奈良時代の貴族の食生活の話から、家族旅行でアワビにあたった話を授業でしたら、そちらの方がインパクトありすぎて、生徒にアワビちゃんと呼ばれるようになりました(笑)。アドリブはできるようになったけど、さじ加減はまだ難しいですね。

橋本 そのさじ加減こそ、経験なんじゃないですかね。ネタ持ってていいなあ(笑)。

― 他の先生方の授業を見学して、ご自身の参考にされることなどもあるんですか?

山根 うちの学校は非常にオープンで、理事長や校長の他、たくさんの先生が授業巡回に来ます。私も去年、50~60授業を見に行きましたし、その逆も。
話はずれますが、私の学校には授業における遵守事項があり、例えば教室にゴミがあってはならないとか、私語をしない等が決められています。その時に遵守事項が守られていないと、その評価がメールで全体に送られてくるんですね。それが嫌で、生徒のための遵守事項を私がやろうとしたり、強要したりしてしまっていた。でも最近は、それは違うなと。遵守事項は正しい。その遵守事項の先に行かなきゃいけないんだなという気持ちになっています。いろんな決まりをすべて生徒の成長に還元しないと意味がないなと。昔、ドラマで金八先生が「すべてのことを教育的事象に高めなければならない」と言ったことを思い出して、これを指導して何が生徒のためになるのか、何が生徒の成長につながるのか。それを常に考えないとぶれていくんだと。常にゴールは生徒の成長、それだけ考えられたらいいのになあと。いつかできたらなあってことを考えられるようになったのが、ちょっと成長ですかね。

橋本 私は、1年目の時はいろんな先生の授業を見に行きなさいと言われていたので、少し見学させてもらいました。1年目の時にはベテランの先生とペアになって、私の授業を見てくれて、私が授業をしているときにはその先生が机間巡視もしてくださるんです。今も、手法が違う先生もおられるだろうから見てみたい気持ちもあり、お願いしたら見せてもらえるとは思いますが、それを言いやすかったのは1年目までですね。もともと先生同士で見る文化があまりないようです。

遊佐 公立は同じ教科の先生も少ないので、あんまり他の先生の授業を見学する機会はないですね。去年、見学したい授業があったんですが、先方に断られてしまったことも。でも、今の地域の学校はけっこうオープンで、来て来てと言われるので、むしろ今年から見に行くようになりました。

― 先輩の先生方とはどのような交流を?

橋本 去年よりも他の先生方とのやりとりはしやすくなりました。講師室が全員一緒なので、他の科目の先生ともお話します。年上のベテランの先生方ばかりなので、授業の方針や、進行具合の相談、クラスの雰囲気の話などもさせていただいています。そういう話をすると、こちらも気持ちが楽になるし、こうしようと考えられる部分もあるし。

遊佐 私は歴史が好きなものだから、歴史が嫌いという生徒の気持ちがわからないんです。授業を組み立てるのが難しいときは、相談しやすい先生に聞いています。相談しないとひとりよがりになってしまうと思いますし。ちゃんと先輩の先生に聞けるようになったのも成長かもしれませんね。

― どうもありがとうございました。

今年もたいへん活発な対談となり、話は尽きませんでした。お話を伺って、教師としての皆さんの確かな成長を頼もしく思うと共に、理想と現実のギャップ、心の揺れなども感じさせられました。
またぜひ、お話伺いたく思っております。

(佼成学園女子中学高等学校 広報室)