理事長講話2月5日(水)、中2を対象とした佼成学園の酒井理事長による講話が行われました。
もし、見知らぬ人が困っているところを見かけたら、皆さんはどうしますか? 今回は、勇気を出して困っている人を助けた少女のお話から始まりました。

今日は皆さんに、思いやりについてのお話をさせていただきます。
先日、私が出席した作文発表会で、小6の少女がこんな話を書いてくれました。彼女はある日、図書館に本を返しに行きました。その日は休館日なので、休館日用の返却用窓口に行こうとしたそのとき、車いすの男性が、窓口に行く途中の階段の前にいて、困っている様子でした。その子は勇気を出して男性に「どうされたんですか?」と聞いてみました。その男性は、「本を返したいのに階段が登れなくてね」と言いました。その少女はすぐに「お手伝いしましょう」と言って、車いすを押しました。
「私は後ろから一生懸命に車いすを押しましたが、なかなか登れません。1段上るのに汗がたらたら出てきました。近くを通る人なんて、見て見ぬふりです。中には、くすくす笑う人もいました。よっぽど私、『どうして笑うのですか?』と聞こうと思いましたが、今手を放したら車いすは落ちてしまいます。笑う人がいても、頑張って車いすを押し続けました。一歩一歩しっかりとふみしめて、力の限り押しました。でも、簡単に登れません。体の不自由な人が階段を上るのはこんなに苦労するのかと、つくづく感じました。自分は階段を上るときは何の苦労もせずに上がれましたが、骨身にしみました。後ろを見ると、もう涙が出るほど嬉しくなりました。たった6段の階段だけど、体の不自由な人にとっては長い長い階段に違いありません。もう少しだと思うと、急に足が軽くなって、嘘のようにすいすいと登れました。
階段を上ると、2人とも汗びっしょりでした。ただ階段を上るだけで、こんなに汗をかいたなんて信じられません。一瞬、夢の世界に行ったようでした。私は嬉しくなって、『おじさん、ありがとう』と言うと、おじさんはびっくりしたような目をして、『どうしてあなたがありがとうと言うんですか? お礼を言うのは私ですよ』
『いえ、私が今日、車いすを押させていただいて、とてもいい経験をさせてもらったんです。今の自分の健康なありがたさを知ったんです。車いすを押させてもらったおかげで、障害もなくこうして中学に通える自分の健康な身を知ったんです。そのことを知ったのは、おじさん、あなたのおかげです』
私がそういうと、おじさんはまたびっくりした顔をして私の顔をまじまじと見ました。本を返すと今度は階段を下りました。私は後ろから押さえながらゆっくりと降りました。のぼりよりはずっと楽でしたが、ばたばたするのでなんとなくおじさんに悪いように思いました。階段を下りると2人とも汗びっしょりで、手も真っ赤でした。
前の道のところまで送ってあげると、おじさんは大きな手を振ってくれて、別れました。家に帰ってよく考えてみると、あの時の私が不思議でなりません。名前も家も知らない人に親切にしてあげるだなんて、信じられません。今日はとてもいいことができたなと、家に帰っても嬉しくてたまりませんでした。私たちは、この世は障害者の人もお年寄りの人も健康な人も、みんなが関係なくお互いに助け合って生きていかなければならないと思います。おじさん、ありがとう」
すばらしい少女ですね。私はこれを読んで、とても感動いたしました。

あるとき、こんな話も聞きました。秋田県で、ある家が火事になりました。高3の息子さんの学校の制服から何から全部焼けてしまいました。翌日、彼がしょんぼりしながらも学校に行ったところ、校門でお友達が、家が焼けてしまった息子さんのために一生懸命募金活動をしていたそうです。友達みんながお小遣いから募金してくれました。放課後、息子さんは募金活動をしてくれたお友達にお礼を言い、そして「どうして僕のために募金をしてくれたの?」と聞きました。そのお友達は、実は以前いじめを受けていて、ある日バスの中でその息子さんにいじめを止めてもらったことがあったんですね。お友達はそれがきっかけでいじめから脱却できた。その時の恩を返ししたいと、お友達はずっと思っていたのです。そのお友達の思いやりにうたれた息子さんは、僕も人のために役に立つ人間になろうと決心し、一生懸命勉強して、一昨年、国立の北海道教育大学に入学し、学校の教師を目指しているそうです。

こんな話もありました。2学期の終業式で、校長先生からもお話があったので皆さんご存知でしょう。昨年の夏、高1の3人の生徒が四谷で、道に迷っている人を目的地まで連れて行って差し上げたました。その方はお礼にと、ご自分が大事にされていた高価な実験器具を、親切な佼成女子の生徒に使ってもらいたいと寄付して下さいました。3人はその時、志望大学の上智大学のオープンキャンパスに行くところでした。そして先日、ニュージーランド留学に旅立ったところです。私も3人に会ったとき、「君たちこそ、勉強に努力すると同時に、困った人を助けてあげる優しい心の持ち主、行学二道のお手本だ」と申し上げました。
皆さんには、この行学二道、学業やクラブ活動に励むのはもちろんのこと、行いの方も、まわりの人を助けてあげたり、喜んでもらえるような女子生徒に育ってもらいたい。思いやりの心掛けを持って毎日生きているかな? 家でお父さんお母さんにどんな態度を取っているかな? 学校で先生に迷惑をかけたり悲しませていることはないかな? お友達をいじめたり無視したり、嫌な思いをさせて知らん顔していることはないかな? 時々は胸に手を当てて振り返ってみて下さい。
もしそういうことがあったら、ひとつひとつ反省をして、心を切り替えてもらいたい。佼成女子の子はいい子だと言われるような皆さんになってもらいたい。
今日はそんなお話をさせていただきました。

(佼成学園女子中学高等学校 広報室)