スイレンこのシリーズも5回目となりました。女子校に勤務する者、女子高生を子に持つ父親として、このドラマを見る度に創作意欲に駆られ?感じたままを述べさせていただいておりますが、同時にこのドラマのファンの皆さんと思いを共有できたらと願いながら執筆しております。学校説明会などでお会いできた際にはご意見を伺えたら嬉しいです。

さて、甲府に初雪が降った日に主人公「花子」の祖父が他界されました。その間際に、孫娘の花子が出版した児童書「たんぽぽの目」を、文字が読めないため婿殿に何度も枕元で読んでもらうシーンが思い起こされます。最初は東京の女学校へ進学することを反対していた「お爺や」でしたが、改めて彼女の感性や文学才能に感化され、この選択が正しかったと確信したのでした。
花子が東京の出版社から要請を受け、教職を辞めて上京しようか迷っていると、お爺やが「めっけた夢は夢中になって追っかけろし、この手でわし等の作れん物を作ってくれっちゃ」とアドバイスし、花子の迷いを消し去ります。私はこの言葉に深い意味を感じたのでした。

文字も読めないお爺やは、小作農一筋に苦労を重ねてきた典型的な農夫でしたから、女子の進むべき道はこうあるべき、と確信にも似た信念が当時の世相も手伝い、根付いていたかと推測いたします。
しかし、病床に伏せ、野良仕事ができなくなり、やっと花子の著書を鑑賞した時、感動と同時に自分の人生を振り返り、それまでの信念が揺らいだのかもしれません。そして自戒にも似た上記のセリフを投げかけたのです。
この言葉は自己否定ではなく、自身のDNAを次世代に残したいという本能がそう言わせたのではないでしょうか。つまりお爺やにも文学を享受する感性は備わっていたのですが、生まれた環境がその才能を封印したまま生涯を終える運命だったため、花子の著作に触れ最後の最後で自身の感性が開花したのだと思うのです。

お爺や自身では果たせなかった文学的才能が孫で開花したことを知ったのです。花子の兄弟の進路は皆同じではありませんが、孫たちはそれぞれの志す道で開花し出しています。それぞれ親の代では果たせなかった、しかし脈々とその思いは子孫に遺伝し、どこかの世代で開花する。教育とはそのような長期的展望の下に存在するような気がしてなりません。
今現在、自分が興味関心を抱いている事柄を追求し、たとえそれが道半ばで途絶えたとしても、それまでの努力が無駄ということは決してないはずです。その思いはきっと次世代の誰かが引き継ぎ(将来、自然とその分野に興味を持つ者、才能を発揮する者が出現するはずです)、いずれは開花することでしょう。今回の放送はそんな期待をを改めて与えられる機会となりました。
お爺やは初雪を眺めながら、以下の俳句を詠み、静かに息を引き取るのでした。その最期はまるで詩人のような崇高な終焉でした(合掌)。

まだまだと、思い過ごしにおるうちに 林の道へ向こうものなり

修左衛門

(文責:高2学年主任 脇坂秀樹(昨年末に父他界))

『Frozen』 RH/Disney

『Frozen』 RH/Disney

追伸:
皆さんのご息女が秘めている才能はきっと本校のような環境で開花することでしょう。なるべく早くにその環境を与えることが得策なのは言うまでもありません。これが中学入試をお勧めする所以です。
先日、昨年から多読指導をしている高2学年生徒全員に、米国ランダムハウス社に発注した『アナと雪の女王』の洋書(123ページ、2万語程度)を配布したところ、歓声が沸き起こり、すぐさま読み入っていました。アナ雪ファンの生徒など期末考査前なのに3日で読み切った兵(つわもの)も名乗り出ています。洋書に没頭するその眼差しは幼少時代の「花子」そのものでした。

⇒「花子とアン」で感じること シリーズ目次を見る