Social Network Design5月31日、佼成学園女子中学高等学校創立60周年記念講演会に、尾木直樹先生にお越しいただきました。毎日テレビでお顔を拝見しない日がないくらいのご活躍ですが、尾木先生は私立海城高校や東京都公立中学校で教師として、22年間に及ぶ子どもを主役としたユニークで創造的な教育実践を展開された教育評論家であり、現在は法政大学教職課程センター長・教授でもいらっしゃいます。この日は、おなじみの柔らかいユーモアあふれる語り口で、LINEに翻弄される現代の子どもの世界や、ゆとり教育の結果の新しい価値観等のお話をしていただきました。

尾木先生は佼成学園とは15年来のお付き合いがあり、佼成女子にも5年前、尾木ママという愛称で呼ばれるようになる前にご来校いただいているというご縁があります。
今回の講演タイトルは、「尾木ママと考える、中学・高校の子どもの心」~グローバル化時代を生きる~ 。

「スマホを持ち、さらにLINEを使うようになったことで、この5年、10年で今の中高生たちの世界は激変しています。LINEの世界では、発言回数の多い子、きつい言い回しをする子がリーダーになってしまいます。ゆっくり返事を考えたいと思っていても、メッセージを確認すればすぐに返事を要求されて、考える余裕が与えられない。これがいわゆる既読疲れで、いじめにもつながっています。LINE はとても便利ですが、使うのならルールを決めないと、子どもが苦しみます。
また、LINEは家族間でも使われていて、特にLINEでお母さんとお子さんが濃密な関係になり、お子さんの生活をすべてコントロールするお母さんが増えているのが問題になっています。お子さんがお母さんに言われたとおり動くロボットになっているんです。実はこれは世界的な問題になっていて、アメリカでは除雪車ペアレンツ、北欧ではカーリングペアレンツなどと呼ばれ、親が子どもの歩く道を先回りして安全で歩きやすいように道を作ってしまっている。子育てにおいて親が目指さなくてはいけないはずの子どもの「自立」を、親の過干渉で大きく妨げているのです」

「その一方で、若い世代には新しい価値観も生まれています。ゆとり教育はずいぶんバッシングされましたが、実は今年2月のソチオリンピックから、その空気が変わり始めています。
例えば、金メダルを取ったのに記者会見で最初の一言が『すみません』だったフィギュアスケートの羽生結弦選手。彼は被災地の代表として挑み、自分が思っていた演技ができなかったのが悔しかったのです。
浅田真央選手はショートでは大失敗したけれども、フリーでは6種類のトリプルジャンプを8回跳ぶという女子では前人未到の演技をして、泣き崩れました。そして世界フィギュアで金メダルを取ったときのコメントは、『ショートもフリーも自分の思う演技ができました』というものでした。
また、年齢は少し上になりますが、モーグルの上村愛子選手もルール改正に左右されず、自分の滑りを貫き通しました。その結果、メダルは取れませんでしたが『やれるだけのことはやれた』と胸をはりました。それを見ていたマスコミ等の方々が、今のゆとり世代は何かが違うぞと気付き、僕のところに取材が相次いだのです。
ゆとり教育の一番のポイントは一斉主義から、個別教育への転換で、1人1人の発想を大事にするということでした。ゆとり教育がうまく行かなかったのは、1クラスの人数が多すぎたからです。
しかし今、ゆとり教育を受けた若者たちが、まずはスポーツの領域から成果を上げ始めました。他にもスノーボードハーフパイプの15歳の平野歩夢選手、18歳の平岡卓選手、水泳では19歳で6種目にエントリーした萩野公介選手らがいます。彼らにとって一番大事なことは、ライバルにではなく、自分との闘いに勝つことです。自分と向き合って、自分の目標を持って、自分と闘っているのです。これは、ゆとり世代の新しい価値観。すばらしいことだと思います」

「しかし、ゆとり教育を受けたらみんなが彼らのようになるわけではなく、その本人が自立している必要があります。では、どうすれば自立させられるか。一番重要なのは、自己肯定感の強い子どもに育てることです。自己肯定感は、目標に挑んだり、苦しいことに耐えたり、人に優しくなれる力の土台なんです。
では、どうしたらこの力がつくかというと、それは自己決定の力を養うことです。先程お話しましたLINEで誰かの言いなりになってしまうようなことは、自己決定力を損ね、自己肯定感をゆるめます。ここにすごく気を付けて下さいね。
子どもたちはLINEで急激に変わってきています。しかし最近では、名古屋の中高生が自分たちでスマホガイドブックを作って、どうしたら人を中傷しないいい使い方ができるかを研究したり、大学生や高校生が講師となって大人にスマホの問題点を講義したり、みんなで新しいツールをよりよく使いこなそうという動きが出てきています。
また、僕が取ったデータによると、家族関係がしっかりしていて、両親が好きという子は、変な世界に巻き込まれてはいかないです。スマホやLINEを禁止しても、家が面白くなければ、もっと悪い何かに入っていくかもしれない。逆に、親や先生といった大人との信頼関係がある子はどんなことにも染まらない。ぜひ、皆さんにはしっかりした親子関係を作っていっていただきたいと思います」

ここではご紹介しきれませんでしたが、この日は叱らない教育のための、お子さんとの具体的なやりとりといったお話もしていただき、会場の保護者の方々からは「大きなヒントを頂いた」との声もたくさん聞かれました。この日、3分に1回は笑わせていただき、5分に1回は「なるほど!」とうならせていただいたように思います。また本校でお話を聞かせていただく機会があれば嬉しく存じます。尾木先生、本当にありがとうございました。

(佼成学園女子中学高等学校 広報室)