rose修学旅行の最終日、ディナーの席で仲間からエールを受けた33名の短期留学生たちは、翌朝早くホテルを出発し、2時間ほどバスに揺られて、ブライトンに到着しました。遠く南方のフランスから対岸に位置し、その名の通り、青く、光り輝く海が高台から望めるリゾート地です。その昔、1066年にフランク王国のノルマンディ公ウィリアムが英国軍を制圧した有名なへースティングスの西方に位置する保養地で、チェルトナム同様に治安が良く、居住者の8割以上が白人です。

Norman Conquest(ノルマン征服)の戦い以降、かなり長い間、英国の支配階級はフランス人となり、フランス語が主要言語となったため、近代に政権交代した後も英語にはフランス語彙が色濃く残ることになりました。結果として、英語は世界でも有数の語彙の豊富な言語となり、英国は産業革命以降世界進出し、七つの海を制圧、「日の沈まない」大英帝国となっただけでなく、世界中に英語という奥深い言語を広めることにもなりました。
ここブライトンの町も、古くからの建造物を何度も改造して現代に至っていますが、そんな古風な建物の一角に、佼成女子の花子さんたちがこれから4週間学ぶ語学学校、リージェントブライトンがあります。昼前に到着すると、すぐにゆっくりはっきりした英語でオリエンテーションを受け、クラス分けテストとなります。テストの最中に数名ずつ呼び出され、英語のインタビューテストも受けます。昼食後には学力ごとに該当するクラスが発表され、昨日までロンドンで羽を伸ばしてきた生徒たちに緊張感がよみがえる一瞬です。

語学学校のクラスメイトは、ヨーロッパやロシア、中東、アジア、南米と、世界中から集まってきています。多国籍なクラスメイト、英語での授業へのプレッシャーから、今までに教室から逃げ出してしまった生徒も。その轍をふまないよう、佼成女子の生徒たちは事前に英語での授業に慣らしてきたので、何とか初日を乗り越えることができました。

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授業が終わると、スーツケースを抱えて各自のホスト宅へタクシーで送り届けられます。ホストが迎えに来てくれたチェルトナムのような「おもてなし」はもはやなく、生徒たちは自らホスト宅のドアをノックし、自力での対応を迫られます。厳しい4週間の幕開けです。これが、本校の誇る留学コースのミニ版、特進・進学コース対象の「短期留学」です。花子とアンで、花子が山梨の田舎から東京の女学校(女子寮)へ出向いたシーンとまさに重なります。

生徒たちからは、それぞれに渡された現地携帯電話で無事にホスト宅についたとの連絡があり、ここで添乗員と引率教員はひとまずほっとすることができます。明日から生徒たちは、それぞれのバスで登校しますので、ホストファミリーから真っ先に教わらなくてはならないことはバスの乗り方です。生徒たちにとっては、否が応でも英語で話し、相手の答えを理解しなくてはならない、まさにサバイバルのスタートです。

そして翌朝、短期留学生33名は、いきなりのバス登校にもかかわらず、ほぼ定刻には全員が集合できました。この嬉しい結果は、事前にグーグルマップで研修した成果でしょう。しかし引率者たちがほっとする間もなく、少数の生徒がホストについて不満をこぼしました。事前に知らされていたホストデータとの食い違いがあったためです。修学旅行仲間と別れ、語学留学初日の不安、ホームシック、こうした条件のもとでの不満は、あっという間に涙となります。もはや理屈ではないそんな時、修学旅行から付き添っていてくれたベテランの女性添乗員の方は、ただ生徒を抱きしめ、慰め、優しい言葉を投げかけていました。彼女もまたその昔、イギリス留学中に何度となく泣き明かしたその道の大先輩であり、生徒の心情は痛いほど分かっているのです。日本では「ハグ」というスキンシップには抵抗もありますが、みんな幼少の頃には「抱っこ」してもらって生育してきたはずで、理屈ではない情の域では、そんなスキンシップが癒しになります。
「花子とアン」では、花子が出版社で失敗して休職を命じられたとき、妹の勧めで故郷の山梨に帰ります。実家に突然戻った花子の思いを察したお母は、単に主観的に同情せず、心を鬼にして、冷静にかつ真顔で「ここにじっとしていても何も変わらんよ。花はもう立派な大人じゃんけ。自分でコピッとけじめをつけにゃいかんよ。落ち着いたらコピッと東京へ帰えれし」と言い、突き放します。そして、抱きしめながら「お母はいつも花の味方さ~」と、娘の選択すべき方向を応援します。女性添乗員と生徒のハグは、そんなエピソードに重なって見えました。

さて、最初の緊張の時期が終り、甘えられる知り合いのいないこの2週間が、この留学の山場です。女子同士で辛さを分かり合える仲間、そして先輩に厳しくも優しく育まれて、この夏、青春時代真っ只中の花子さんたちはさらに成長することでしょう。まさに「可愛い子には旅をさせよ」の現代版です。

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(佼成学園女子中学高等学校 広報室)