東日本大震災から6年が経ちます。今、私たちは何を考えるべきなのでしょうか。
高1特進文理コースでは、三学期の現代文の全授業を使い、震災について共に学ぶ取り組みをしました。

まず、著名な評論家4氏(東浩紀・赤坂憲雄・辺見庸・内山節)の評論を読み、震災を考察する切り口を得ました。震災について学ぶということは、単にその悲惨さに心を痛めて防災の必要性を再確認することだけではありません。例えば、辺見庸氏は震災後のテレビで繰り返し放映された公共広告機構のCMを取り挙げ、言葉とメディアが及ぼした社会的影響について考察します。赤坂憲雄氏は東北沿岸を歩きながら、高齢化と過疎化が進む地域における自然と人間の関係や精神の拠りどころについて考察します。震災を経験した社会について考察するということは、言語・メディア・近代・身体・自然・共同体・科学など、私たちが生きる現代文明をあらゆる観点から捉え直すという営みなのです。

生徒たちは、与えられた評論だけでなく、自分自身で震災に関連する書籍を探して読み進めました。このような複合的な読解を通じて自ら具体的なテーマを見出し、明確な問題提起を設定して弁論原稿を作成していきました。

弁論大会はクラスごとに予選・本選の二回実施しました。予選はグループで行います。ルーブリックという独自の評価表をもとにメンバー間で相互評価しました。総合評価点の最も高い生徒がグループ代表に選出されます。本選ではグループ代表が登壇し、クラス全員の前でスピーチします。教員と生徒全員の評価をもとに、各クラスの最優秀者を決めました。

A組最優秀賞の安東さんのテーマは「独身」です。震災以降、メディアでは多くの家族の物語が語られました。一方、独身者にまつわるニュースは少なかった。こうした対比的な視点から、震災直後と復興期において、どのように独身者が既婚者の分まで奮闘したか明らかにする弁論でした。安東さんは、当初は放射能被害など別のテーマで調べるつもりでしたが、参考文献を探しに行った本屋の店員さんとの会話の中で、酒井順子著『地震と独身』を紹介してもらったそうです。書店員さんとの出会いが新たな問題点に目を開かせてくれ、とても幸運でしたね。

B組最優秀賞の松村さんのテーマは「自衛隊に対する誤解」です。多くのメディアが災害後の自衛隊の活躍を賞賛し、被災地も感謝の声で溢れていました。にもかかわらず、一部の被災者は自衛隊に対して不満をもっていたそうです。その背景に迫り、自衛隊への過度な期待が招く誤解をどのように解消できるかを論じる弁論でした。松村さんは、最初はちょっと面倒な課題だと思っていたそうです。けれども、部活動で毎日忙しい中、地元の図書館を三軒まわって様々な震災関連の本を読んでいくうちに、新たに知ることがたくさん出てきて、調べることが楽しくなってきたそうです。

C組最優秀賞の長嶋さんのテーマは「災害救助犬」です。災害救助犬は、特定の個人を捜索する警察犬と異なり、探す人の匂いが分からなくても行方不明者を探し出す能力のある犬です。日本では2004年時点で112頭が認定されています。この数字が他国と比較していかに低いかを明らかにし、災害救助犬育成の必要性を論じる弁論でした。長嶋さんは、まず図書室に常にいらっしゃる司書の先生に相談し、参考文献を決めていきました。何冊もの本を読んでいくうちに、想像以上に災害救助犬が普及していない現状が見えてきて、知的好奇心を刺激されたようです。

初めての試みでしたが、生徒たちはよく頑張りました。自らテーマを決め、自ら本を探して読み、自ら原稿を書いて発表する。普段の授業とは異なる頭の使い方をしたと思います。震災について考える機会が少なくなりつつあるなか、こうした主体的な学習を通して、問題意識を深めてくれれば何よりです。

(文責:国語科 秋田)