3月21~23日、吹奏楽部は岩手県南部と宮城県北部の沿岸地域を訪れ、東日本大震災から6年経った被災地を巡りました。

訪問に先立ち、3月18日午後に事前学習会を催しました。今回訪問する場所の位置を地図で確認し、過去の津波被害の歴史を学びました。そして、被災直後の釜石市の遺体安置所を題材とした映画『遺体 明日への十日間』を一緒に見ました。死について考えることは、生について考えることでもあります。東北吹奏楽キャラバンは、部員一人一人が死と生に向き合う旅となるため、あらかじめ心の準備をしてから臨みました。

三陸鉄道◇三陸鉄道
初日、部員32名と楽器を詰め込んだ大型バスは東北道を北上し、大船渡市の盛駅に到着しました。三陸鉄道南リアス線の南端の駅です。三陸鉄道の熊谷さんが迎えてくださり、「震災学習列車」に乗車しました。車両はクウェートから寄贈された原油500万バレルの代金から購入されたもので、車体にはクウェートへの感謝を記したプレートや紋章が描かれていました。
岩手県沿岸部を走る三陸鉄道は、地震と津波の甚大な被害によって全線運転不能になりました。しかし、社員の皆さんの強い意志により、震災5日後には一部の運転を再開します。一時はもう無理かと思われた全線復旧も2014年に成し遂げました。
盛駅から釜石駅までの10駅を進む間、車窓から見える風景には震災のつめあとがくっきり残されています。そうした場所にさしかかると列車は徐行し、熊谷さんが当時の被災状況を語ってくださいました。いずれの駅や線路も海から随分と高い位置にありますが、津波がホームを飲み込んだところもありました。
現在、三陸鉄道の乗客数は震災前よりも少なくなりました。沿線の人口が減少したうえ、鉄道不通期間に車やバスを使った通勤通学のお客さんの一部が、以前のように鉄道を利用しなくなったことが原因だそうです。今回はあいにくの雨でしたが、晴れていれば三陸のリアス式海岸の絶景が望めます。ぜひ皆さんも「さんてつ」に乗りに三陸を訪れてみてください。

震災学習列車

震災学習列車


◇大槌町
一般社団法人「おらが大槌夢広場」さんにお願いして、大槌町を語り部さんと一緒に見てまわりました。市街地の6割近くが壊滅した大槌町の中心部には、当時の役場がそのまま残されています。町長と多くの方々が犠牲になった場所です。冷たい雨が降る中、悲痛な体験をされた語り部さんのお話を部員たちは真剣に聞いていました。

大槌町

大槌町


◇釜石市
二日目朝、立正佼成会釜石教会で演奏会を開催させて頂きました。釜石教会を訪れるのは、2012年の第1回東北吹奏楽キャラバンでお世話になって以来です。今回も多くの方にお集まり頂きました。一緒に歌ってくださる人、目頭を押さえる人、明るく手拍子してくださる人。熱心に聴いてくださる皆様の姿に私たちも心を動かされ、励まされました。演奏会の後には、震災時に波にのまれながらも奇跡的に助かった方のお話をお聞きしました。自分は生かされているという言葉の重みに、部員たちは何を感じたでしょうか。

釜石教会演奏会

釜石教会演奏会


◇陸前高田市
陸前高田市は津波で市街地が壊滅し、岩手県内で最も多くの犠牲者が出ました。今回、仮設プレハブ店舗が並ぶ陸前高田「未来商店街」で野外演奏会を開催させて頂きました。強い風が吹いて楽譜が次々に飛ばされるなか、部員たちは演奏を中断することなく最後まで心をこめた音楽をお届けしました。お仕事中にもかかわらず、わざわざ足を運んでくださった商店街の皆さんや近くの銀行の皆さん、どうもありがとうございました。

未来商店街野外演奏会

未来商店街野外演奏会


演奏会後、「味と人情の鶴亀鮨」さんと「食事と本とお酒の店てるてる-くいどころ小澤-」さんで美味しい海鮮丼を頂きました。来月4月27日には新市街地の核となる複合商業施設「アバッセたかた」が完成し、未来商店街のお店も順次この新市街地へと移っていく予定とのことです。プレハブの店舗はまもなく閉じられます。復興が進む街で再びお会いできることを信じております。

その後、語り部さんに同乗して頂き、陸前高田の沿岸部を巡りました。海岸沿いにある道の駅の跡地に行きました。ここを高さ14.5mの波が時速50kmで襲ったそうです。頭をあげて道の駅の建物の最上部を見ると、津波の達した位置に線が引いてあります。想像を絶する高さに息をのみました。
国道沿いには気仙中学の建物跡が残っていました。津波に完全にのまれた校舎ですが、震災の日、校長先生の勇断で近くの山へ生徒たちを避難させたことにより、全員が難を逃れたそうです。

陸前高田

陸前高田

陸前高田

陸前高田


◇石巻市
三日目朝、公益社団法人みらいサポート石巻さんの「語り部さんと歩く3.11」というプログラムに参加しました。2グループに分かれ、3.11当日に語り部さんが被災した地域を、お話しを聞きながら一緒に歩きました。私たちが訪れた南浜地区は、現在非可住地域となっています。あたり一面、草が生い茂る荒涼とした光景に目を奪われました。2020年までに整備され、「石巻南浜津波復興祈念公園」の建設が予定されています。所々に残るかつての住宅街の痕跡も、やがて全く見られなくなるでしょう。強風が吹く更地のなかで、語り部さんのお話に真剣に耳を傾け、想像を巡らせたことは、部員たちにとって忘れられない経験となったことでしょう。

語り部さんと歩く3.11

語り部さんと歩く3.11


震災から6年が過ぎました。しかし、今でも行方不明者が岩手県内だけで1000名を超えています。精神的に受け入れらない人も少なくないそうです。釜石教会の教会長さんは「建物の復興は進んでも、心の復興にはまだまだ時間がかかる」とおっしゃっていました。その言葉をお聞きし、東北吹奏楽キャラバンを今後も続けていく意志を新たにしました。

東北の人々との出会いを通じて、部員一人一人がたくさんのこと考えさせられました。そのことが、学業と吹奏楽に打ち込むことのできる日常の有り難みを、改めて実感させたことでしょう。こうした気づきを与えてくださったのは、今回の旅でお世話になった岩手・宮城の皆さま方です。本当にありがとうございました。

佼成女子吹奏楽部

1日1日を大切にする。佼成女子吹奏楽部は、いま自分たちがやるべきことをこれからもやってまいります。

(文責:吹奏楽部 秋田)

*東北吹奏楽キャラバン
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