本皆さん、こんにちは。校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

第9回は、「『君たちはどう生きるか』を読んで」と題してお届けいたします。

「……一人一人の人間はみんな、広いこの世の中の一分子なのだ。みんなが集まって世の中をつくっているのだし、みんな世の中の波に動かされて生きているんだ。……君が広い世の中の一分子として自分を見たということは、決して小さな発見ではない」

1937年に吉野源三郎という児童文学者が発表した作品『君たちはどう生きるか』の一節です。1937年といえば、歴史的には、日中戦争が勃発したときであり、ここから日本は太平洋戦争への道を歩んでしまうこととなります。

『君たちはどう生きるか』は80年の月日を経て、昨年漫画化され、2018年1月現在でも書店売り上げベスト5に入る人気を博し、若い世代を含む多くの方々に読まれています。
私は小学生のころ、担任の先生に紹介されてこの本を読んだことがあります。そのときに感じたことと今回読み返したときの差は全く比較にならないものでした。ある意味、大きな衝撃でした。作品の中で、人と人との繋がり・人間の結びつきや事象に対する考え方、正義という観念などが表現されていきます。主人公コペル君は先輩からいじめられている友達を守ろうと友達同士の中で提案するのですが、そう言った当人だけが、恐怖心からいじめを傍観し、友達を裏切ってしまう。コペル君の自分自身への憤りや蔑みの思いが淡々と表現されていきます。コペル君の気づきや、やり場のない思いをおじさんが受け止め、人としてのあり方をノートに綴っていきます。

本棚なぜ今この作品が再び注目されるのか。多くの人が悩みや不安を抱え、生きる道標たる言葉や考えを求めているのかもしれません。リバイバルした背景に一抹の不安を感じることも否めません。
本来、このようなことを扱っていくのは学びの場である教育機関、成熟した社会であり、宗教であると思います。日本では、その部分に足りなさがあり、教育機関ではなく、書物やメディア、また宗教ではなく、スピリチュアルなものに救いを求めるのかもしれません。パワースポットと呼ばれる場所に若い女性が多く行くことなどにもその一部が現れているのではないでしょうか。
いずれにせよ、若い世代の人々は、このような輝きのある作品から、自分がいかに生きてゆくべきか、他者とどのように接するかという課題のヒントを得ることは素晴らしいことだと思います。
学びの場に携わる者の一人として、価値ある考えを共有して、子供たちの進むべき道に灯かりを燈してあげることの大切さを感じます。つまり、学校が日々の教育活動の中で、友達や教師、いわゆる他者との関わり方を学ぶことや生きる目標を設定できる場になっていかなければならないと思うのです。

中3は修学旅行と3ヶ月の中期留学で、また高1のKGGS特進留学コースは1年間の長期留学でニュージーランドに出発しました。ニュージーランドは自然との共生、先住民族マオリの言語・文化を尊重する、キリスト教を中心に宗教を重んじる国です。子供たちは現地の家庭や現地校の人々から日本とは異なる文化や価値観を学べるはずです。

子供たちには、優れた書物から貴重な考えを得ることに加えて、実社会の中で新たな価値観を手に入れて、幅広い視野を身につけてほしいと願います。

(佼成学園女子中学高等学校 校長 宍戸 崇哲)