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第6回東北吹奏楽キャラバンのご報告(1)

東北吹奏楽キャラバン3月26~28日、吹奏楽部は宮城県を訪れ、東日本大震災から7年経った被災地を巡りました。3回に分けて、その旅行記をお送りします。

震災翌年に始めた佼成女子東北吹奏楽キャラバンも今回で6回目を迎えます。当初は、犠牲者を鎮魂し、復興に尽力する人々に音楽を捧げることを主目的としてきました。しかし、回数を重ねるごとに、むしろ私たちのほうが多くを学び、自己を見つめ直す機会やご縁を得る旅となっています。今回も多くの方々と交流してお話を伺い、全身で現実を受け止め、様々に思いを馳せる旅となりました。

1.東北福祉大学 防災教育ワークショップ
初日、部員28名と楽器を詰め込んだ大型バスは東北道を北上し、仙台市の東北福祉大学国見キャンパスに到着しました。旅の企画段階で、現地の学生さんと交流する機会を設けられないか、宮城県の教育旅行等コーディネート支援センターにご相談したところ、精力的に活動を続けている東北福祉大さんをご紹介頂きました。ボランティア支援課の渡辺さんはじめ、学生ボランティアの皆さんや職員さんが迎えてくださいました。
東北福祉大学 防災教育ワークショップまず渡辺さんに東北福祉大学のボランティア活動についてご紹介頂きました。ボランティア支援課は設立から20年たち、なんと8割もの学生が自主的に活用しているそうです。東日本大震災の際も、発災翌日から支援活動を開始し、避難所運営のサポートなどに努めてこられました。長期の避難所生活によるエコノミー症候群を予防するための「さんあい体操」を考案するなど、独自の取り組みも注目されています。今回、部員たちは5つのグループに分かれて、大学生ボランティアの皆さんによるワークショップに参加しました。減災防災のために地元に戻ったら取り組んでみたいことについて、「伝える」「そなえる」「支える」「その他」という4つの視点から一緒に考えました。
このワークショップに先立ち、石巻で中学1年生の頃に被災した学生さんの体験談をお聞きしました。山へ逃げて危うく難を逃れたこと、軽自動車の中で1週間生活したこと、食糧難で様々な誤報が飛び交っていたこと、体育館が遺体安置所になっていたこと、仙台の中学に転校してから周囲との意識のギャップに傷ついたこと、仮設住宅とは異なる「みなし仮設」住まい特有の社会的疎外感を味わったこと、故郷の石巻を離れたことへの後ろめたさを感じ続けてきたことなど、リアリティのあるお話をたくさんお聞きしました。様々な苦しい経験をしたが、石巻で多くのボランティアにお世話になったので、自分も何かできればと考え、学生ボランティアとして活動しているそうです。この学生さんは、パワーポイントを使いながら、とても分かりやすく語ってくださったのですが、後でお聞きしたところ、今回初めてこういう場でご自身の体験を語ることができたそうです。そこには私たちにはうかがい知れない大きな決断があったはずです。「友達・家族・ごはん・電気…すべてを当たり前に思わないで、大切にしてほしい」というメッセージ、部員たちの心の深いところにきっと届いたことでしょう。本当にありがとうございました。

2.日鐵住金建材 仙台製造所
日鐵住金建材 仙台製造所仙台市宮城野区にある日鐵住金建材仙台製造所は、東日本大震災時に壊滅的な被害に遭いました。しかし、従業員全員命を落とすことなく、その後奇跡的な早さで生産ラインを復旧させ、東北の復興のために建材の製造を再開させました。当時の様子を所長さんが語ってくださいました。
あの日、地震が起きてから、工場で働いていた皆さんは避難マニュアルに沿って、敷地内にある高さ約5mの築山に避難しました。津波はすぐにはやってきませんでしたが、東京本社からかかってきた電話をそのままつなぎっぱなしにして津波襲来の情報収集を続けながら、家族のもとへ駆けつけたいと申し出た人も含め、誰1人その場を離れることを許さず待機したそうです。すると高さ3mの津波が瓦礫とともに押し寄せてきて、工場を破壊していきました。もし車で逃げていたら、渋滞に巻き込まれて波に呑まれたことでしょう。避難マニュアルに沿って日頃の訓練通りに避難したことが全員の命を救うことにつながったと、所長さんは力説されていました。
日鐵住金建材 仙台製造所壊滅的な被害を受けた工場を見て、もう二度とここでは働けないのではと震災当日は感じたそうですが、それでも「我々の製品は被災地の復旧復興に不可欠だ」と皆さん一丸となって奮起し、工場内に流れ込んだ瓦礫や破壊された設備を撤去し、ラインを清掃して塩分をふきとり、装置の分解・点検・補修を重ねました。全てそれを「黙々と」「淡々と」こなしたそうです。5ヶ月後には最初の出荷ができる状態にこぎつけたと聞き、驚きと感動を覚えました。
さらに、日鐵住金建材さんは今回の教訓を生かして、新たに「津波避難タワー」を開発・販売し、いまでは仙台市の一時的な避難所に指定されています。建材メーカーとしての技術力を生かし、防災のための新たな製品を世に出すその心意気と行動力に圧倒されます。私たちはそのタワーにも登らせて頂きました。お忙しいなか、部員たちのために熱心に説明してくださり、本当にありがとうございました。

3.立正佼成会仙台教会
演奏会今回の2泊3日の旅では、立正佼成会仙台教会に全員の宿泊を受け入れて頂き、食事までお世話になりました。27日の朝には、震災時の体験談をお聞きした後、約1時間の演奏会を開催しました。平日にもかかわらず大勢の方にお集まり頂きました。曲目は「宝島」「風笛」「昭和歌謡メドレー」「愛燦燦」、そしてアンコールに「花は咲く」を皆さんと一緒に歌いました。
部員たちは前日のミーティングで、ただ上手な演奏ではなく、心に届く演奏をしようと決意を語っていました。きっと演奏を聴いてくださった会場のお一人お一人、様々な思いが胸に去来したことと思います。皆さんの熱心なまなざし、大きな拍手、演奏会後の温かなお言葉が、部員たちをまた一回り成長させてくださいました。本当に得難い体験をさせて頂き、感謝の念でいっぱいです。

旅はまだ続きます。次回の記事をお楽しみに。

東北吹奏楽キャラバン

(文責:吹奏楽部 秋田)

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