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宍戸校長の【Back to Basics】「共感と協働を考える」

皆さんこんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「共感と協働を考える」と題してお届けいたします。

 

〜テロで紛争を起こす人達に「共感」はできないが、なぜそういうことをするのかを理解しなければならない〜 オバマ元大統領

 

ブレイディみかこさんはこの言葉を引用して、empathy・sympathyの区別を述べて「共感」という考えを論じる。

sympathy 誰かをかわいそうだと思う感情・何かへの支持や同意を示す行為

empathy 他者の感情や経験などを理解する能力

 

私は『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』(ブレイディみかこ 新潮社 2019)を書店で目にしたとき、これは本校の生徒たちに英国の公立学校の生活や人々のライフスタイルや物事の考え方の一端を理解するため、優れた教材になると考えた。また、ブレイディさん家族が暮らす英国ブライトンは、長く本校が夏期語学研修を実施している地でもあったからだ。個人的には1994〜95まで英国に留学して、その後何度も英国各地を訪問、自分なりに英国の文化、歴史、生活様式を知って、男女両校での英国語学研修やコッツウォルズ地方への修学旅行、SGHとしてロンドン大学SOAS校と特別提携を結び、現在のSGクラスの最終目標、高3時の英語論文研修で深く実りのある関係を続けている。

上記の作品の中でブレイディさんは、「共感」という言葉の曖昧な定義を明確にされたため、世の注目を集めた。さらに、「自分の靴を脱いで他者の靴を履いてみる」という例えがとても理解しやすく、「共感」の意味合いを的確に表現された。

 

 

 

 

 

 

国際社会で共通目標となっているSDGs、「多様性」や「差別・区別」の問題を考える際に解決への道筋上にあるもの、「他者の立場を想像して共感する」がある。この「共感」をempathyと意義づけて、経験や気持ちを想像する能力を育てていくことは現在の子どもたちに大切な資質であると考える。私は本校の教育方針の中でも「共感・協働」を掲げて、子どもたちに事例を出しながら折に触れ、共感から協働への流れを話している。

人々が互いに「違い」を理解し合うこと、まずはここから始める。全て合致して事柄を進めることは大変難しいと知る。合意点を見出して、取り組む内容を柔軟に変化させながら、協働して最終目標を目指す。

 

 

 

 

 

 

一方で家庭や学校、職場のような小さなソーシャルユニットでも、この実践は困難であることを私たちはもちろん、子どもたちも生活の中で身に染みて知っている。

では、どんな取り組みをすれば良いのか。なるべく、その難しさを数多く体験して、ある種のスキルを上げていくことではないかと思う。

学校ではこのような形になるだろうか。

共通の大目標を共有する。行事、イベントや部活動の中で、無論、授業内でも話し合いの場を設定して、自ら思考して、考えを定め、それを丁寧に伝える。(これは「自分の靴を履く」にあたるのかもしれない。)その後、真摯に話し合いをすれば、互いの意見の違いが明らかになる。ここで共感や歩み寄りをしながら、付け加えたり削ぎ落としたりして、ひとつの大きな決定・判断をする。そして他者の協力を得ながら、大目標に向けて協働する。

新たな時代の教育の求める力はこのようなところにあると信じて、本校は建学の精神をバックボーンに据え、時代が求める教育の取り組みを創り、実践していく。

学校は知識を教授するだけでなく、自分が当事者意識を持って考え、話し合う場、そして様々な体験できる場となっていきたいと考える。

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