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「『The answer is blowin’ in the wind.』」宍戸校長の【Back to Basics】

皆さんこんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「『The answer is blowin’ in the wind.』」と題してお届けいたします。

 

「The answer is blowin’ in the wind. 答えは風に吹かれている。」

Bob Dylanのbrowin’ in the wind (風に吹かれて)1963年リリースの歌詞の一部である。2016年には歌手ではじめてノーベル文学賞受賞という快挙を成し遂げて話題になった。

先日、全校生徒にこの楽曲を紹介して、特に歌詞の持つ深い意味を共に鑑賞した。

実はその言葉の中に、私たちが現在抱えている様々な難題と向かいあう気持ちと似たような嘆きが表れているように思えたからだ。

 

  Yes, and how many ears must one man have before he can hear people cry?


人はどのくらい聞けば、人々の悲しみがわかるのだろう

 Yes, and how many deaths will it take ‘til he knows that too many people have died?

どのくらいの人が死ねば、多くの人が死んだことに気づくのだろう

The answer, my friend, is blowin’ in the wind, the answer is blowin’ in the wind.

          友よ、答えは風に吹かれている

 

コロナ禍が未だ終息せず3年目の初夏を迎え、世界情勢はロシアによるウルライナ侵攻が世界各国に大きな影響を与えて、異常な緊張状態が続いている。信じられないような悲惨な出来事が次々と私たちの眼前で起こり、混乱した中で困難な状況を強いられている。

このような時代を生きる私たちに、この詩の意味を子供たちと考えることは意義深いことであると考えた。私は、楽曲の一部を聞いてもらい、その後、歌詞をスライドで示した。そして、このような数点を話した。

 

 

 

  • 現実世界で起きていることに対して当事者意識を持って、考えていこう。
  • empathy 他者の立場を想像する力をつけよう。
  • 事柄の表裏、複数の視点を持って、本当のこと、事実を理解するようにしよう。
  • 正解はわからないが解決への道筋を考える、そして諦めずに考え続けよう。さらに自分の考えを他者と共有していこう。さらに人それぞれができることを行っていこう。

 

歌詞の中には、主体的な表現が出てこない。自らが答えを考えることが求められているのではないか、それゆえ、問いかけに対して、当事者意識を持つことを伝えた。残念ながら、この歌詞の頃の歴史的背景にふれる時間はなかった。子供たちには詩の内容を深く理解できるので、その時代を調べるように薦めてみた。今の世界情勢と結びつけて、歴史が繰り返されている様子に気づく子供たちも少なくないであろう。

 

また、人は自分の立場からものを考えるため、事柄の一面が全てのように思えてしまう。しかし、視点を変えると全く違った景色が見えてくることがあり、判断する際には視野を広げ、時に俯瞰的視点を持つことが重要である。自己分析も同じで、自分の行動を斜め上から客観的に見て判断することも大切だよ、とも話した。

言うは易く行うことはとても難しい。しかし、不安定、不確かな時を生きる私たちは忘れてはならない見方だと思う。これからも同様の事柄を、例えや事例を変えながら、繰り返し子供たちと共有していこうと思う。

 

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