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「生きた探究学習を求めて」宍戸校長の【Back to Basics】

皆さんこんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「生きた探究学習を求めて」と題してお届けいたします。

「記述問題」「総合型選抜で小論文」「探究型学習で論文作成」「自己P R文作成」など、子どもたちが感想文、レポート文書や論文作成を求められる機会が増えている。表現や発表の場でプレゼンテーションやディスカッションが重視されるが、思いつくことだけで考えをまとめ質の高い発表をするのは、なかなか難しい。そこには文を作成するという作業が土台となり、論理的かつ効果的な表現が組み立てられるのだと思う。人々を説得できる分かりやすい表現を可能とするのは、やはり様々なジャンルの優れた文や作品に子供の頃から多く触れ、良い模範とすること、感性を磨くこと、幅広い教養を身につけること、などであろうか。

子どもたちの探究発表やレポート、小論文などを読み、秀逸なものを見つける頻度がここ数年で高くなってきているように感じる。なぜだろうか。本校も含めて、現在の小中高で新時代教育が進み、論文とは何か、その書き方指導を行う学校が増えつつあるからかもしれない。論文と感想文、エッセイなどはそもそも書き方が全く異なる。アカデミック論文は主観的な感情や感想を一切入れてはならず、問い〜主張〜論証の筋立てで、構造に曖昧さがあってはならない。

このような論文の型を知ることで、ある程度整ったものができるのだと思う。型通りに体裁を整え、ルールに沿って書くことは大切である。しかし、研究テーマを設定する、主張内容を決めることが最も難しく、また最も重要であると思う。本校の探究学習の成果発表の際、外部識者からコメントされる点もこれである。子どもたちと共に探究学習を進めるのに苦心するのは、テーマ設定に他ならない。論文作成を通じて、論理的な思考の醸成をするとともに、日々何かに気付き、疑問や問題意識を感じる資質を磨くことが意義あることであろう。

まずはアンテナを張って、身の回りの小さな課題や問題に気づくことである。たとえば、本校の最寄駅の商店街では、永く自転車の数の多さと駐輪場所に課題があり、人々が困っている。近隣の街から通勤・通学のために自転車で来て、大勢の人々が特急停車駅であるこの駅を利用するからである。この課題をどのように解決するか、熟考することは立派な探究学習である。2014年初期のS G Hの生徒の課題研究テーマの中で、地方のS G H校の研究に「地域活性化」「インバウンド観光」などのワードが並んだ。身近な地域の課題からから始めて、日本社会、「地球温暖化」「S D G‘sの発展」「世界の少子高齢化」「多文化共生社会」「世界の貧困」「ジェンダー差別」など地球規模の課題に展開していくのである。まさにlocalからglobalな視点の構築である。

講話の中で、子どもたちによく話すことがある。

探究テーマで「世界平和をいかに進めるか」を論じている人が、家庭や学校、職場で他者と揉めていたり、見て見ぬふりをして関係構築を避けたりしていて、平和構築を語れるだろうか。まずは自分の身近な課題に取り組むことから大きな問題の解決の方策が見えるのではないですか。また、論文の書き方を学んでもそれは始点に立っただけです。ここから探究や課題解決の道が始まるのです。

 

本校では、自分も含めて、机上だけでなく、身の回りの気づきを大切して生きた探究を子どもたちと進めていきたいと思う。

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