宍戸校長のBack to Basics Back to Basics

「well-beingを考える」宍戸校長の【Back to Basics】

皆さん、こんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「well-beingを考える」と題してお届けいたします。

 

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 

 

「健康とは、単に疾病がない状態ということではなく、肉体的、精神的、そして社会的に、完全に満たされた状態にある」 WHO 憲章前文(1947)「健康」の定義

 

well-beingを考える際に多く引用されるものである。ここ数年の国際情勢や不安定で、閉塞感や不確実性に溢れた現在の世界だからこそ精神的、社会的に完全に満たされた幸福がより注目されるのであろう。最近のO E C Dの国際報告によれば、well-beingには「心理的」「社会的」「認知的」「身体的」4つのアスペクトが存在する。ここでも「心理的」「社会的」という側面が出てきている。さらに慶應大学の前野・岡本両氏の幸福学研究ではより分かりやすい表現で、

「やってみよう(自己実現と成長)」「ありがとう(つながりと感謝)」「なんとかなる(前向きと楽観)」「あなたらしく(独立とマイペース)」という幸せを構成する4つの因子として研究が進められている。こちらでは認知的・身体的から、より心理的・社会的な面にfocusしている。

幸福は自分の受け止め方であるとよく言われる。幸福は他者や環境に求めるのでなく、自分自身に委ねられているのかもしれない。上記の因子では、子供の頃から聞いてきたような事が挙げられている。つまり人として幸福を得るための究極の方法なのかもしれない。

このブログでも本校の教育方針や「行学二道」「5つの実践」を繰り返し紹介しているが、その教育観と幸福学の4つの因子は共通している部分が多いことに気づく。何か困難な事象が発生すると、それに立ち向かうためにあれこれ考えを巡らし、ネガティブなことに支配されて、負のスパイラルに落ちてしまうことがある。特に他者との関わり、人間関係ではこの傾向が強いと思う。仕事で言えば、最悪な事態を想定してリスクマネジメントを図る。それ自体は大切なことであるのだが、先を読み過ぎるためにマイナス方向ばかりのことが思い浮かぶようになる。このようなことは仕事だけでなく自分自身の身体、心のこと、さらに人間同士の関係、家族、身近な人、社会へと拡がっていく。

 

こんなことを考えてしまうことはないだろうか。

「身体の調子が悪い。重病に違いない。」「私はどうせ運が悪い。どう頑張ってもダメなものはだめ。何もしたくない。」「あの人は私を嫌っている。あの人さえいなければ全てうまくいくのに。」「そもそもうちの親がダメだから私がこんなに苦労しなければいけない。」「こんな学校だから私はうまく行かないんだ。受験で失敗して滑り止め校に来たからだ。」「私は優秀なのに周りが私をきちんと評価しない。他に行けば必ず良い方向にいくのに。」

もちろん、実情を的確に捉えている場合もあるかもしれないが、多くのケースでこれらは果たして正しいと言えるだろうか。客観的に自分を見つめた際、自信を持って同じことが言えるだろうか。

物事を表から見ることと裏から見ることでは、事柄は全く異なる。同じ事案で、加害者と被害者では事実そのものへの捉え方が全く異なるのと同じだ。同様に多方面から物事を見て前向きに判断するようにすると、余計な不安や心配、ひいては幸福と相反する不幸、ストレスが減少する。誤った判断を避けることでそれほど不平不満を感じなくなり、幸福感を得ることにつながるのではないか。

 

 

今般well-beingが再注目され、社会的に解決されなければならない課題、少子高齢化、労働力人口激減、ジェンダー、多様性、働き方改革、ワークライフバランス、人種と宗教、などが挙げられる。このような問題はもちろん教育現場や社会で深く探究されていかねばならない。

しかし、他者と意思疎通を図る上で、自らの考え方や物の見方を変えることが幸福になるための根本的な動きであると考える。このことに取り組む個人があって、その上で社会的な課題を考えることがあるのだと思う。

 

不安定で、心配の多い状況だからこそ、子供たちの素晴らしい将来のために、彼らには「自らの物の見方を柔軟にすること」を土台に「社会的な課題探究」を進めていくようになってほしいと思う。S D G sにあるように、「全ての人に健康と福祉を」に一歩でも近づくように教育現場として努力していきたいと思う。

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