宍戸校長のBack to Basics Back to Basics

「永遠に生きるかのように学べ」宍戸校長の【Back to Basics】

 皆さんこんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。
 毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「永遠に生きるかのように学べ」と題してお届けいたします。

 1月中旬、本校生徒の健康状況に関する案件で、世田谷保健所の方から複数回、電話でご連絡をいただいた。教頭が対応しているのだが、間違いがあってはならないので、スピーカー設定にして、複数人で内容を共有、確認していた。私もその場にいて、注意深く聞いていた。Nさんと名乗られたその担当の女性は、丁寧にかつ的確に生徒やそのご家族の健康状態、校内の濃厚接触判断等に言及された。話の途中に体調不良者を気遣う言葉や私たち学校の緊急対応の労をねぎらう配慮ある言葉をくださった。日々報道される保健所の様子を考えると、毎日が戦場のような状態であろう。東京都でも特に世田谷区の相談件数は大変な数になると聞く。声の感じからはまだお若い方だと思われたが、実に立派なそのご対応に私は深く感銘を受けた。要件が終わろうとしたとき、私は話に割って入り、「国民の一人として、教育に携わる者として、Nさんのご配慮ある適切な対応に深く感謝いたします。ありがとうございます。」と思わずお伝えした。Nさんは「学校も大変な中、わざわざのお言葉ありがとうございます。皆さんも体調にはくれぐれもご注意ください」と仰った。深刻な社会情勢であるが、困難に立ち向かうことに勇気をもらう出来事だった。医療従事者の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様も、きっとNさんのように他者のために配慮されながら、懸命に業務に向かっていらっしゃるのだろう。

 1月8日オンライン始業式の中で、子供たちには感染予防対策について、今まで以上に自らできることを適切に確実に行うこと、さらに予防のためのマナーやルールを大切に考え、校内外で実践すること。社会の一員として、それぞれが責任を持って、自分や他者の健康や命を守る意識を持つことを伝えた。また、以下が子供たちに話した内容である。

 世界が、日本社会が正解のない課題に直面して、まさに悩んでいる。日々試行錯誤の連続である。人類は現在の困難を乗り切ろうと互いに力を尽くして、もう一年が過ぎた。誰もこれほどの事態がこれだけ長期間続くとは考えていなかったが、現実は私たちが自分の眼で見ている姿だ。元日にN H Kの番組で、「ローマ人の物語」の著者として知られる歴史小説家の塩野七生さんがインタビューで、以下のように話されていた。「人類は歴史上こういう感染症の危機を何度も乗り越えてきた。今、人類はエスカレータでなく、階段を登っている。(現在の感染拡大の第3波について)階段で言えば、次の階に行くために息を整える踊り場にいると思えば良い。また、日本人は物事の100%を望んではいけない、何事も失敗を恐れてはいけない」と。塩野さんの言葉に私は共感した。はるか及ばないが、私は、昨年末の終業式で、留学や海外フィールドに出られない生徒や、大会に出られない部活の生徒たちに対して、「現在は日本にいて、安全を確保しながらできることに集中するしかない。いわば、高い跳躍へ向けての沈み込みの体勢だと思う。」と伝えた。夢や希望という言葉が力なく地べたに落ちてしまうような出来事が続いているが、人々が恐怖や不安ばかりに振り回されていてはいけない。私たち大人は、輝く未来ある子供たちに、いつでもどんな時も前向きな姿で、火を灯し、その進む道を照らしてあげたいと思う。しかし、歩くのは子供たち自身である。今まさに難解な正解のない問いが彼らの前に散財している。思考力を醸成して、彼らが問題の解決策らしきものを自立して生み出すように成長してほしい。偽りや不正確な情報に惑わされず、次々と求められる判断事に対して、自分が正しいと思う方向へ舵を切っていくことができるように、現在のこの難問を最大限利用して学んでほしい。今は誰かが重責を担い、ある判断をしてくれる。結果を見て自分の仮定の解決策が正しかったか否か、検証できるから。成長過程だから実践演習ができる。学びが多く深い者はいざというとき、他者よりも適切で優れた判断ができる。

 

最後にマハトマ・ガンディの言葉を子供たちに紹介した。ガンディの言葉から力を得てほしいと思う。もちろん、私たちも力をもらい、この難局を皆で乗り越えたいと思う。

束縛があるからこそ、私は飛べるのだ。
悲しみがあるからこそ、私は高く舞い上がれるのだ。
逆境があるからこそ、私は走れるのだ。
涙があるからこそ、私は前に進めるのだ。

明日死ぬかのように生きよ。
永遠に生きるかのように学べ。

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