佼成女子News一覧 Kosei Gakuen Girls' News List

高2高3生徒の発言が新聞各社に掲載されました(戦争・平和教育)

8月24日(土)に行われた黒川開拓団「佐藤ハルエさんが遺したもの」に高2高3有志の生徒が参加し、その内容が岐阜新聞・信濃毎日新聞・朝日新聞に掲載されました。

黒川開拓団とは、戦前の日本において「満州国」(現:中国東北部)に渡った満蒙開拓団の一つです。こうした開拓団は、アジア太平洋戦争の敗戦とともに侵攻してくるソ連軍やもともと現地に住んでいた人々から襲撃を受けました。命の危機に瀕するなかで、黒川開拓団の幹部は、団を守るため、敵であるソ連兵に警護を依頼し、その見返りとして数えで18歳以上の未婚の女性を出して「性接待」をさせました。

※詳しくは『史実を刻む~語り継ぐ”戦争と性暴力”』を参考にしてください。

こうした重く苦しい「性接待」の事実は、長年公の場で語られることがなかったのですが、佐藤ハルエさんなどの数名の女性が勇気を出して証言をし始めたことで近年注目を浴びるようになりました。今年1月にハルエさんが亡くなったため偲ぶ会が企画され、以前講演授業をしていただいたり、ハルエさんのもとへ証言を伺いに行ったりしたご縁から、今回私(髙野)と有志生徒が参加しました。

オンライン参加した生徒たち
オンライン参加した生徒たち

 

上記動画を視聴した生徒たちは、会のなかでハルエさんや「性接待」についてコメント・質問し、遺族会の方々から「高校生とは思えない立派な発言・質問で勇気をもらった」という声をいただきました。

女子校だからこそ、現代の戦争でも続く女性が戦争で遭う惨禍という「戦争のリアル」を直視して考えなければならないのではないでしょうか。

岐阜新聞 2024年8月30日付掲載(大賀記者)
岐阜新聞 2024年8月30日付掲載(大賀記者)
信濃毎日新聞 2024年8月25日付掲載(前野記者)
信濃毎日新聞 2024年8月25日付掲載(前野記者)

 

最後に、会に参加した生徒の感想を抜粋して紹介します。

・岐阜新聞の大賀さんがプレゼンで紹介してくださった「ある小学生の話」という、性被害にあった側にも原因があるように話が広まっていく「レイプ神話」に恐怖をおぼえました。このレイプ神話を創らないように、報道の現場にいる方々が、開拓団における「性接待」を報じる上でどれほど工夫をしてきたのかを知ることができました。それによって、性暴力がいかに繊細で取り上げづらい話題であるのかを再認識し、10代である私たちがこの満州で起きた被害を、次の世代にどうやって伝えていくべきかを考える良い機会となりました。お恥ずかしいのですが、私は今まで満州で起きた性被害について知りませんでした。「なぜ戦争をしてはいけないのか?」という問いに「たくさんの人が傷つくから」という回答しかできませんでしたが、その「傷つく」という枠の中にどんな人がいるのか想像ができておらず、自分の戦争に対する考えの浅さを痛感しました。(高3 T.Y)

・私は今回参加させていただいて、ハルエさんの「世間に知ってほしい」という気持ちがたくさんの人に届いている気がしました。遺族会の方々や家族の方々はもちろんですが、学校の先生方やメディア方々、たくさんの人々がこの悲惨な出来事を無かったことにしないように、1人でも多くの誰かに伝えるために、それぞれの方法で全力を尽くしていると思いました。そして、私たち学生もたくさんの人に今回学んだことを伝えていかなければならないと思いました。また、そのためには事実を知ること、勝手な偏見を持たないことが大切だと気づかされました。(高3 H.H)

・戦争の経験談というのはこれまで聞いたことがありましたが、今までどれだけ自分がステレオタイプな被害者像を当たり前としてきたかを目の当たりにして、衝撃を受けました。加害の側面からも歴史を考えるという話は特に印象的でしたが、同時に満蒙開拓団がしてきた「開拓」が侵略行為だったとしても、その上で、加害させられてしまったという被害がある事は私たちもしっかり考えなくてはいけない問題だと思いました。
 正直、今まで戦争の歴史を学ぶ時に「私にできることはない」と思ってしまうところがありました。しかし、戦争体験者と向き合える最後の世代として「伝えたくても伝えられない歴史」をこれ以上増やさないために何ができるのか当事者として関わらなくてはいけないと思うことができました。(高3 M.H)

 

※以前行った講演授業などの詳細は、明治図書『社会科教育』2024年10月号に掲載された拙稿「『戦争体験』と向き合った平和教育 現代につなぐポイント」や、歴史教育者協議会『歴史地理教育』2022年12月号に掲載された拙稿「『被害』と『加害』の重層性-生徒の歴史意識をいかに育むべきか」をお読みください。

(髙野晃多)