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KGGS17期生・SG6期生合同 北海道研修報告

KGGS17期生とSG6期生は合同で、2022年3月16日(水)~19日(土)、北海道にて研修を行い、大きなけが人・体調不良者も出ず無事に終了しましたので報告いたします。

本来ならば海外研修・留学、フィールドワークが予定されていた留学クラスとSGクラス。探究的な学びが得られる機会を設けるため、このような国内研修を企画いたしました。

実施に当たりまして直前まで感染防止のために行程を工夫し、また感染対策を徹底、同意いただいた家庭のみの参加といたしました。
今回の研修実施に際して、協力くださった学校内外の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

 

以下、生徒たちの学びの様子をお伝えします。

 

1日目:二風谷にてアイヌ文化と歴史問題に触れる。

二風谷はアイヌの伝統工芸で有名な地域で、生徒たちは民芸店「北の工房つとむ」を見学しました。見学の際にアイヌの伝統工芸である木彫をしている若手工芸家と生徒との間で対話がはじまり、なぜこの職についているのか、木彫りに対する思いなどを語ってもらいました。

一方で二風谷はアイヌの聖地(チノミシリ)がダム建設で切り崩された問題でも有名で、本件について裁判を起こした貝澤耕一さんに講演をいただき、二風谷ダムを一緒に見学しました。

二風谷というアイヌ文化と歴史問題がすぐそばに同居する地を訪れたことで、簡単に解決することができない問題の複雑さを生徒たちは感じたようでした。

 

職人さんとの対話の様子
貝澤さんとのダム見学

 

2日目午前:白老町ウポポイにて、アイヌ文化と歴史問題をさらに相対化させる。

白老町に移動し、2020年に開業した民族共生象徴空間(ウポポイ)にて博物館の見学、伝統芸能(歌・踊り・祈り)の鑑賞、食文化体験、その他映像体験コーナー等を巡り、アイヌの文化をより一層知るとともに、併設されている慰霊施設を訪問しました。

慰霊施設については事前学習でその設置経緯・歴史的背景を学んでいた生徒たち。アイヌ文化と歴史問題が隣り合わせになりながらもすれ違う様子をここでも体感しました。

ウポポイの博物館を見学
ウポポイの慰霊施設を訪問

 

2日目午後:北海道大学 蔵田伸雄教授による環境倫理グループワーク

学びの場を札幌に移し、蔵田教授のご専門の一つである環境倫理について講演をいただきました。その後「200年後の北海道の未来を選択する」グループワークに参加、大学・大学院での授業を体験しました。

グループワークでは今後あり得るかもしれない北海道の未来のシナリオについて、エネルギーや産業、税制等さまざまな条件を考慮してディスカッションしました。生徒たちは楽しんで取り組んでおり、普段の総合探究等の授業が大学での学びと地続きになっていると感じさせられました。

 

蔵田教授によるワークショップ

3日目午前:北海道大学の留学生と意見交換、北海道大学総合博物館を見学

ブラジル・ウクライナ・中国・マラウィ出身の北海道大学の留学生たちと「各国の温暖化問題と取り組みについて」議論しました。キエフ出身の留学生は現在のウクライナ情勢に関する切実な思いも語ってくれました。

総合博物館では時間をかけてさまざまな学部・専門分野のブースを留学生と見学。生徒が日本語の展示を英訳して留学生に伝えるなど、良い交流の機会となりました。

留学生とのディスカッション
留学生と北海道大学総合博物館を見学

 

3日目午後:小樽でのものづくり体験・市内見学、0円都市開発合同会社 中村領社長講和

小樽に移動し、指輪づくり・和菓子づくりを職人さんの指導のもと取り組みました。

市内見学を終えたのちに、再び札幌に戻って空き家を0円で仲介するマッチングサイトを運営する会社を起業された中村社長から、その起業までのストーリーと日本の空き家問題について伺いました。

主には地方の問題として事例等を取り上げられていましたが、実は空き家の件数が日本で一番多い自治体は本校の所在地である世田谷であることを中村社長から最後に伝えられ、生徒たちは非常に驚き、大きな問いをいただくことができました。

小樽でのものづくり体験
0円都市開発合同会社 中村領社長講和

 

4日目:札幌市内班別行動

研修最終日は札幌市内を班別行動し、クラスメートとの思い出を作りました。

 

濃密な4日間で、生徒はさまざまな学びを得たようです。
その一部を紹介いたします。

 

留学クラスTさん

現在の北海道に至る前から先住民族として存在していたのに、今回初めてアイヌについてより深く知りました。この事実にも疑問を持つべきだし、アイヌ文化を知るだけでなくその歴史的背景を知ることの重要さを知りました。しかしなぜ政府はこんなにもアイヌ民族という存在を否定し続けていたのか、その理由を問い詰めたいと思いました。
今回の研修では先住民族からローカルな問題まで非常に多くの分野を学ぶことができました。今回得た新たな知見をこれからの問題解決に活かしていこうと思います。

SGクラスSさん

バスでの振り返りの時間では、「偏見」について話し合いました。アイヌの差別では劣ったものとして下に見られてしまう現状があり、話し合いが大切であると感じました。どうしても人間は共感を求め、仲間意識を大切にしています。マジョリティにあることで、安心できるからです。私もそう感じることもありますが、マイノリティにあるからこそ特別で大切な存在であるのだと感じます。アイヌの人も今でこそすごく少数になりましたが、先住民族として日本人も認識していく必要があると考えます。偏見の生じる理由として、「上の人をねたんで下の人を見下して起こる」という意見があり、私もその言葉にすごく納得しました。(中略)
他にも沢山ありますが、今回の研修では北海道と言うことでアイヌについて学ぶことが多くありました。言語や文化、歴史に触れることができました。しかしそれだけでなく、未来について倫理的な面から考えたり、まちづくりの現場に触れたりと様々なことを学べて、とても有意義な時間を過ごすことができました。タイのフィールドワークや、イギリスのSOAS研修に行くことができずとても残念でしたが、国内でもできることがあるのだと実感することができました。4月からは高校3年生で最高学年、かつ受験生になります。そのため今回の研修を含め今まで触れてきた事を活かして、悔いのない学校生活を過ごしたいと思います。

受験生となる直前に知的探究心を深めた国際コースの生徒たち。
今後の活躍にご期待ください!