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高1特進文理コース・現代文 震災をテーマに弁論大会

東日本大震災から8年が経ちます。今、私たちは何を考えるべきなのでしょうか。

高1特進文理コースでは、2月の現代文の授業を使い、震災について共に学ぶ取り組みをしました。

まずはInputです。評論・随筆・詩など8つの言論(金菱清・東浩紀・赤坂憲雄・辺見庸・内山節・小松理虔・石戸諭・鴨長明・和合亮一)をまとめた冊子を配り、震災を考察する切り口を得ました。例えば、東浩紀氏は震災によって人々は意味や物語を失って確率的な存在になってしまった中、思想に何ができるかと問いかけます。金菱清氏は大学生とともに被災者が見る夢を聞き取るフィールドワークを行い、死者と共生する人々のありようを考察します。複数の文章を横断しながら、数字のデータだけでは語れないものがあることを共に学びました。

自ら本を選んで考えることも大切です。まず教員が図書館司書の先生と協力して作成した読書案内を読み、様々な切り口の震災関連書籍があることを理解します。そのうえで、生徒達は自分で書店や図書館に行って本を探して読み進めました。そして、クラスメートに薦めたい本を持ち寄り、ビブリオバトルを行いました。インターネットに依存しがちな時代にあって、紙の本から得られる知的興奮を共有することを私たちは大事にしています。対話によって、自らのInputをOutputに変換する楽しみを体験しました。

さらに、今年度の現代文の総仕上げとして、全員が3分間の弁論原稿を作成して発表しました。弁論には3つの条件があります。明確な問題提起をすること、書籍からの引用を含むこと、対比構造を用いることです。グループでの予選を勝ち上がった6名がクラス全員の前でスピーチをし、生徒たちによる詳細な相互評価をもとに、各クラスの最優秀者を決めました。

A組最優秀賞の徳久さんのテーマは「みなし仮設」です。プレハブ型の仮設住宅と異なり、既存の賃貸住宅に住むことになるみなし仮設。一見過ごしやすいように思えますが、現実には、全国からの支援物資が届かず、被災者のコミュニティから隔絶してしまうなど、復興の過程から取り残されるようになっていきます。「復興から取り残される人々の暮らしの再生に必要なものは、巨大プロジェクトの加速ではない」(岡田広行『被災弱者』岩波新書、2015)という言葉を引用して、被災弱者の存在を私たちが知ることの重要性を訴えました。徳久さんはSGクラスの一員として、これからも社会的に光があたっていない問題を発見して研究活動を進めていきたいと抱負を述べていました。

B組最優秀賞の梶原さんのテーマは「震災遺児」です。東日本大震災で親を亡くした18歳未満の子どもは1700名以上います。梶原さんは、NHK取材班『ひとりじゃないドキュメント震災遺児』(NHK 出版、2012)を読み、「感情をシェアできる存在が必要」という考え方に出会いました。そして、子ども達の年齢に近い自分たちこそが、「感情のシェア」を大切にし、子ども達と同じ目線で寄り添うボランティアができるのではと訴えました。梶原さんは、震災遺児だけでなく、ネグレクトを受ける子どもたちの抱える問題にも関心を持っています。今回の震災学習をきっかけに、身近なところでどのようなボランティア活動が可能か探していきたいと抱負を述べていました。

自らテーマを決め、自ら本を探して読み、自ら原稿を書いて発表する。生徒達は、普段の授業とは異なる頭の使い方をしたと思います。震災について考える機会が少なくなりつつあるなか、大人も子どもも関心を持ち続けることが大切だと考えます。

(文責:国語科 秋田)