本校高校3年生の本多 由芽さんが、高校2年次の総合探究ゼミにおける継続的な研究活動の一環として応募した戦後80年手紙プロジェクト「若者から若者への手紙1945←2025」において、応募作品の中から見事【優秀作】に選出されました。
本プロジェクトは、アジア太平洋戦争の体験者の証言(『若者から若者への手紙 1945←2015』ころから、2015年刊)と向き合い、現代の若者が「同世代の友人」として手紙を執筆しながら歴史と対話する取り組みです(詳細は最後に募集チラシを記載)。今回は、全国29通の応募作について、教育者・専門家などからなる4名の講評委員会による審査が行われ、本多さんの作品「M26/高校生 李(イ)鶴来(ハンネ)さんへの手紙」は、講評委員から「高校生ながら圧巻の手紙」と満票に近い極めて高い評価を受けました。
本多さんの研究テーマは「戦犯裁判と法の正義・公正性」。旧日本軍に従軍するなかで、朝鮮人ながらBC級戦犯として戦後裁かれ、その後日本の戦後補償からは切り捨てられた元朝鮮人BC級戦犯・李(イ)鶴来(ハンネ)さんの理不尽な不条理に向き合いました。朝鮮半島の出身である李さんは、捕虜監視員として動員され日本軍の軍属になった際に、日本軍式の「ビンタ」などで軍隊教育を受けました。だからこそ、自分たちも連合国軍捕虜に同じように「ビンタ」をしてしまったことで、戦後、捕虜虐待の罪に問われて死刑判決を受けたのです(のちに減刑)。李さんたちは捕虜の取り扱いを定めた国際条約の存在を知らされていなかったことで、結果的に捕虜を虐待してしまいました。こうした李さんについて学んだ本多さんは、手紙の中で被害と加害が複雑に交錯する歴史構造を提示した上で、次のように綴っています。
「情報を自分で選んで取得できる、大きく言うと選択する自由があることと、幾重にも積み重なった日本の歴史の先に私が生きていることを、自覚しようと。それが、今を生きていることに対しての紛れもない事実であり、その自覚が、戦争を考える時には必要不可欠であると。」
受賞作は、2026年9月30日(水)~10月4日(日)に千葉県船橋市で開催される「平和のための戦争展」にて特別展示されます。以下、プロジェクト事務局・講評委員会による公式評と応募作全文です。
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「M26/高校生 李鶴来さんへの手紙(心に残った手紙 講評委員複数推薦) |
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■ 学外体験・フィールドワーク・学外発信が結実した1年間の歩み
本多さんの髙野ゼミでの探究活動の最大の特徴は、自ら問いを立て、現場へ足を運び、社会と対話し続けた「学び・思考と行動の連鎖」にあります。ゼミや2025年6月の「高校生平和のつどい」スタート集会への参加をきっかけに、歴史や平和に対する問題意識を形成していきます。7月には自発的に「第五福竜丸展示館」へのフィールドワークや核兵器禁止条約批准を求める署名活動へ参画するなど、主体的かつ実践的に学びを深めていきました。
そして、 11月の「高校生平和のつどい」本集会では、実行委員として準備段階から主体的に運営を担いました。当日は第7分科会「満蒙開拓団の悲劇と人間の尊厳」の司会として、進行・質疑などを担当しました(写真左)。本校が関わった映画『黒川の女たち』に登場する黒川開拓団 遺族会会長の藤井宏之さん・湯美子さんご夫妻(写真中央・左から1・2人目)をお招きした分科会での発言と対話の記録は、書籍『高校生につなぐ戦争証言』(地平社ブックレット)の一章として、今年8月に刊行・収録されたことも特筆すべきです(写真右)。
☆詳細はこちら☆https://chiheisha.co.jp/2026/07/28/978-4-86863-007-4/
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さらに、成城大学主催「サポーターズフォーラム」や東京学芸大学主催「探究の共創」でのポスターセッションにも参加し、発表を行いました。こうした機会に専門家や他校生との対話を通じて研究を洗練させ、2026年2月の「せたがや未来の平和館」フィールドワーク・平和学ワークショップを経て、1年間の探究を高次元に昇華させました。
このように、ゼミや高校生平和のつどいでの学びをきっかけに、本多さんは自ら行動の幅を広げていきました。そして、こうした活動を通して、戦争における「被害と加害の重層性・構造的暴力」にまで思考を深めていきました。本多さんが「情報を選択できる自由がある現代に生きる者として、積み重なった歴史の先にいる自分を自覚する」という手紙プロジェクトでの高次の結論に達したことは、当事者意識を育みながら、今後の社会を担う主権者として成長していった証だと言えるのではないでしょうか。現代の国際法や国際刑事裁判所をめぐる動向やそのあり方などにも興味関心を抱いている本多さんの姿からは、歴史家の有名な言葉通り、まさに「歴史は現在と過去のあいだの対話である」ことを実感させられます。今後の活躍にも、大いに期待しています!
(髙野 晃多)
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