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第7回東北吹奏楽キャラバンの旅行記(1)

3月24~26日、吹奏楽部は福島県浜通りを訪れ、東日本大震災から8年経った被災地を巡りました。

佼成女子吹奏楽部は、震災翌年以降、被災地をめぐる東北吹奏楽キャラバンを続けています。7回目となる今回は、地震や津波という天災だけでなく、原発事故による喪失と復興についても学ぶことを目的とし、福島県観光交流課さんの全面的なご支援を受けて、様々な現場で奮闘を続けている方々との対話を重ねるスタディーツアーを展開しました。実に素晴らしい旅となりましたので、ぜひ多くの方に同じように現地に足を運ぶきっかけになることを願い、旅行記を2回に分けてお送りします。

 

  1. 事前学習会

出発前日、学内のグローバルセンターに集まり、約2時間の事前学習会を開きました。まず先月放映されたNHKの2画面ドキュメンタリー「無人の町から8年~福島県浪江町~」を一緒に見ました。震災直後と今の浪江町の様子を見比べながら、この8年間で何が奪われ、何が変わったのか、映像を通して学びました。それから、昨春訪れた宮城県の被災各地の写真や、顧問が昨夏訪れたチェルノブイリの写真を見たうえで、今回はどんな「問い」をもって福島を訪れるか、一人一人考えてシェアするグループワークを行いました。自分なりの問いをもち、現地でも必ず質問する、このことを部員17名で共有しました。

 

  1. フィールドパートナー菅野さんとの出会い

3月24日(日)早朝、大型バスに楽器を詰め込んで出発です。バスは常磐道を北上し、双葉郡の南端にある広野町の公民館に到着しました。そこで、今回の2泊3日の旅に同行してくださるフィールドパートナー菅野孝明さんから、旅のガイダンスを受けました。まず、それぞれに原子力災害地域に対するイメージを書き出すことから始めました。「危ない」「怖い」「人が少ない」「灰色のイメージ」など、生徒達は率直な印象を書き出していきます。菅野さんは「いよいよ学びのスタート。この最初のイメージを大切に」と生徒達に呼びかけました。きっと生徒達は3日間で大いに成長するだろうという確かな予感を感じさせる素晴らしいガイダンスでした。

 

  1. ふくしま浜街道・桜プロジェクト

広野町を拠点に活動されているNPO法人ハッピーロードネット理事長の西本由美子さんのお話を聞きました。震災前から地域の高校生と一緒に地域づくりを支えてきた西本さん。そのエネルギッシュで温かみのあるお話に釘付けとなりました。国道6号線沿いに桜を植えていこうと訴えた高校生の強い思いを語る西本さんの柔らかな眼差しが今も印象に残っています。その後、大変ありがたいことに、部員達は6号線の桜並木を覆う草刈りのお手伝いをさせて頂きました。様々な困難を乗り越え、震災で犠牲になった高校生の思いを大切にする西本さんたちの活動に触れることができ、部員達は大いに刺激を受けました。きっと今ごろ6号線沿いには可憐な桜が花開いていることでしょう。

 

  1. 立正佼成会平教会での演奏会

初日の宿泊先は立正佼成会平教会です。皆様のご厚意に甘えて、栄養満点の食事をご馳走になりました。翌朝、部員達はミニコンサートを開きました。大変ありがたいことに、平日にも関わらず大勢の方にお集まり頂きました。教会長さんのご配慮により、演奏前に皆さんと懇談する時間をいただきました。お陰様で、部員達は「一人一人に演奏を届ける」という思いで演奏ができたようです。曲目は「宝島」「演歌メドレー」「ロンドンデリーの歌」「赤い屋根の家」「USA」 「春よ、来い」、そしてアンコールに「花は咲く」を皆さんと一緒に歌いました。

皆さんの温かなまなざし、大きな拍手、演奏会後の優しいお声がけが、部員たちをまた一回り成長させてくださいました。本当に得難い体験をさせて頂き、感謝の念でいっぱいです。

  

 

  1. 東京電力廃炉資料館・新福島変電所

この後、浜通りを北上し、大熊町大川原地区にある大熊食堂でランチを頂いたのち、富岡町の東京電力廃炉資料館を訪れました。昨年11月にできたばかりの資料館には、原発事故当時の状況や廃炉に向けた取り組みについて、映像や模型などを使ってわかりやすく紹介されていました。大人も子供も一度は訪れたい資料館と言えるでしょう。

その後、内陸側にある大規模な変電所を訪れ、その構内の一室で東京電力の社員さんから直接お話を聞く機会をいただきました。「福島復興本社の取り組みについて〜福島復興への責任を果たすために〜」という題で、福島第一原発の各号機の構造と状況、汚染水対策、現場の労働環境、除染活動、風評払拭への活動などについて一つ一つ丁寧に説明してくださいました。生徒達から次々と出された質問にも真摯に答えていただきました。生徒達は、被害にあった人々や地域の思いに寄り添いながらも、複雑な問題を安易に単純化せずに多面的にとらえることの大切さと難しさに気づけたのではないかと思います。

 

この後、部員達は浪江の町を訪れます。旅行記後半をお楽しみに。

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