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宍戸校長の【Back to Basics】「文科大臣来校と新しい時代の教育①」

皆さんこんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「文科大臣来校と新しい時代の教育①」と題してお届けいたします。

 5月19日(水)、萩生田文科大臣が佼成女子に来校された。大臣は「失ったものより得たものを数えよう。失ったように見えたものは、実は失ったのではなく「貯金」してあるので、これからの人生でそれを引き出して頑張ってほしい。」国際コースで海外留学や研修に行かれなかった子どもたちに、造られた表面的なものでなく、温かい血の通った言葉をかけてくださった。厳しい情勢下、子どもたちも私たち教職員にも心に響いたお言葉だった。本来、該当の高3生はロンドン大学で研修している期間であった。現地に行けなかったのは大変残念なことであるが東京にいたからこそ、質疑応答のなかで文科大臣に直接自分たちの声を届けることができたとも言える。他のクラスの生徒たちも海外留学に行く機会を奪われているが、この情勢下だからこそ可能な学びができるのだと前向きに捉えてほしい。政府にはまさに正解のない問いに日々取り組んでいただいていることへの感謝を申し上げ、子供たちの成長のために、1日でも早く国境を開く策を講じて欲しいこと、また、学びの代替策提供に国も積極的に関わってほしいとお伝えした。

さて、「どうして文科大臣が佼成女子に来校されたのか。」

本校は文科省より2014年Super Global Highschool第1次指定を受けて5年間の指定期間を終えた。そして今年、全国S G Hネットワーク校として再指定を受けた。

本校が2017年SGHフォーラム初代優勝校であること、本校の偏差値レベルが他のS G H校と比較してそれほど高くない、それにしては英検上位級の取得者が多いこと、難関大学への合格率が高いこと、文科省の方々、さらに大臣ご自身が本校の国際理解教育、英語教育、探究型学習を中心とした特徴的な「新しい時代の教育」の内容に興味関心を持たれたこと、これらがご視察の理由ではないかと考えている。

当日は本校S G H事務局長からプレゼンテーションを行い、その後、高3S G(スーパーグローバル)クラスの英語授業を見学していただいた。本校は指定期間中から取り組みを進めていく上で、多くの課題があった。文科省による全国の100以上指定校に対して、外部中間評価の中で、本校の取り組みに厳しい評価が公表された。それは「取り組みを限定したクラスやコースで深彫りするだけでなく、全校に取り組みを拡げていくこと」というものであった。

首都圏で最も早く始まった、2003年始動のニュージーランド・クラス丸ごと1年留学コース、この教育内容の先進性と源流にある精神性が、本校の英語教育や国際理解教育を強く牽引してきた。その特徴的かつ効果的な内容と、この流れを受け継ぐSuper Globalクラス設置への期待感で、全国の名門校に並び、56校に指定していただいたのだと考えている。先進的で尖った部分を中心に、国の政策S G H事業をきっかけにして、本校は21世紀型教育への歩みを一気に加速させようとしていた。しかしながら、新しいことを試みることは内外ともに多様な意見が存在し、困難が多い。現在の大学入試共通テスト改革、英語外部検定利用入試導入、探究型学習推進などを想定すれば、その難しさは容易に推測できよう。

当時はS G H事業そのものに対して、社会的に期待がある反面、疑問や反対の声も多く、Super Science Highschool のような効果は望めないのではないかと思われていた。本学園内部でも推進に対して賛否は分かれ、心配や不安の声もあがっていた。S G H執行責任者だった私は、次の年に新設するS Gクラスのカリキュラムやプログラム内容の構築、特にタイでのフィールドワークやロンドン大学SOAS校での研修などに向けて準備を進めていた。このようなことが最も困難であろうと思われるが、実際には、SGH事業を学校全体で運営、拡大することが最大の課題であった。

(つづく)